ナンバーワンの彼女に
すっかり魅了された私は
今までみたいに
追っているだけの女ではいけない
と思うようになってきた

自らの力で
光を作り上げる

追いかけるのではなく
常に対等でありたい

心配り、駆け引き、武器の使い方
教わる事はたくさんありすぎる

でも無情にも夏休みという期間はあっという間に終わり

私はまた、あの町へと戻らなければいけなかった
お金はかなり溜まったけど
行きと同じように高速バスに乗って
故郷へと戻る事にした

ただ一つ違っていたのは

靴だ

どんな生活をしていても
靴だけは素敵なものを身につけておきたい

きっと、その靴に似合う女になれる気がして
私の小さな、密かな決意だった

ポケットの中に入ってたポケベルが振動を震わせた

何度も何度もかけてくれていた
それは彼だった

公衆電話から彼のPHSに連絡を入れる

「もしもし」

「お前、いまどこ?」

「大阪」

「大阪のどこ?」

変な会話だった
バスに乗るところで、これから帰ると伝えると
彼は電話を一方的に切った


バスを待っていた私の背後から
腕を強く掴まれた

後ろを振り向くと
あの時みたいに息を切らした彼が
そこに立ってた....


私があなたから自立しようとすると
もの凄いタイミングで
あなたは、私を捕まえにくる

私の心を引き戻しにくる

意思が弱いといえばそうなるけど
唯一の私の居場所が無くなることが

どんなに強がってても
何より私が怖いって思ってたの

絶対、知ってたよね?


彼に連れられて
故郷の町へと戻った

そして私は彼に京都の高校へ進学する意思を伝えた

反対されたり、苦い顔されるかと思ったが
彼は笑ってその事を喜んでくれた

また両親に伝える時にも
一緒になって説得してくれたんだ

両親も、生活費の仕送りは無しという話で
最終的に折れてくれて

私は15の春

彼とともに
この町を後にした......

開放感に満ちあふれるかとも思ったけど
そんな事より
自分の光を掴むことができるのか
そんな事ばかり考えていた

彼は、どんどん先へと進んでいく
私は、どこへ向かって進んでいくんだろう?