今は、考えられないと思う
身分証明とか
規制管理が厳しくなっていって
14歳で水商売で働くなんて
雇う側も困惑し..
というより、まず真っ当な店なら雇わないだろう

でもその頃はまだ
そんなモノがいい加減で
通用していたんだ

18歳
見えなくはなかった私は
すんなりとミナミのキャバクラで働く事が決まった

自分がしてきた化粧なんて比べ物にならない
キラキラした照明に
異様なほど、身体にフィットするドレス
ヒールのある靴が
こんなに自分をスタイル良くみせてくれる事を
はじめて知った


こういうところのシステムを理解できていなかったから
何をすればいいのか
挙動不審な私を、お店のママが席に呼んだ


「新しく入った、アキちゃん」


男達に紹介される、着飾った私

アキちゃんは
ママが私に付けてくれた
言わゆる 源氏名 というやつで

何をして、どういう風にして時間がすぎたのか覚えていない

男達は若いというだけで
もてはやした
何もしなくても笑っているだけで
いいんだと
私を甘やかした

仕事を終えて、もらった封筒の中には
諭吉も混ざってた

ありえない

こんな簡単に
お金って手に入るんだ.....

そんな風に思っていた私を見透かしたように
ママが私に言ってきた
その言葉を今でも覚えてる

それは歳を重ねるごとに重みを増し
それからの生き方に影響を与えてくれた

「若いというのは最高の武器やけど、それだけで通用するほど
 世の中は甘くないんやで
 若いなんてもんはな、一瞬や
 見てくれだけで勝負なんか知っとったら
 すぐに足下すくわれて痛い目みるだけやで
 客商売は人の心掴んでなんぼやから
 周りをよう見て、意味を考えなあかん
 ようするに頭を使えへんと
 生き残れへん事を、しっかり覚えとき
 まだ、あんたにはわからんかも知れんけどな」


その時は意味もわからず、聞いていたけど
働きだして何日か経ってくると
ある疑問を持った

私が働いていたお店のナンバー1という女性は
確かに綺麗ではあるけれど
もっと、綺麗で華がある人たちは他にも沢山いた

なんでなんだろう?

この人がなんで一番なんだろう?

私は何度かその人のヘルプにつく事ができて
その様子を伺っていた

これといって何かが違うわけでもない
やっぱり裏で噂されてた枕営業というやつか?
そこまでして、トップになりたいのだろうか?
そんなものだろうか?

14歳の私には、理解ができなかった


日が経つにつれて、そのトップの女性は
何故かよく私の面倒を見てくれるようになった

プライベートでご飯を食べに連れていってくれたり
行きつけのバーでカクテルの名前とかも教えてくれ

お金がない私に、衣装まで面倒をみてくれて
色々と相談にも乗ってくれるような関係になっていった

そんな付き合いの中で
少しずつ見えてきたものがあった

店で働いていない時間

どんなに疲れて時間がなくても
お客さんとコマメにコミュケーションを取り
心配りを忘れない
そして、自分磨きにも手を抜かない
美容室はもちろん、新聞とか小難しい本とかを読んだり
時に私を連れ出して、美味しいと有名な店へ連れていってくれた

彼女から常に向上していく気持ち
そして陰の努力という事を教わった

それらを積み重ねる大変さも

私が初めて
素敵な女性だな
こういう人を「いい女」っていうのではないだろうか
と思った瞬間だった