まだ、男だとか女だとか
意識もせずに遊んでたころ

元々彼の家族と私の母親が仲がよくて
私達は知り合った

彼は3つ上で
血は繋がってないけど、私の兄と同い年だった

普通なら兄妹でキャッチボールとかして
遊んだりするんだろうけど
これといって、一緒に遊んだ記憶はない...

キャッチボールも木登りも
そんな事を教えてくれたのは、彼だった


いっつも、後ろを追いかけてた


10歳の時
家に色々な人達が来ていて、いつものように私は罵られていたんだけど
その時、誰かの不倫の末に産まれて
この家に押しつけられたという事実を耳にしたんだ

あー、だから大人達は 
そんな目で
私を見るんだ
蔑んだ目、哀れな目

お金すら持ってないのに
何も考えず、はじめて家を飛び出した

行く宛もなく
駅や公園をうろついてた

見慣れた商店街の光景が
涙でボヤけて見える

私は、どこに行ったらいいんだろう?

橋の下にある小さな茂み中に腰をおろし
星の光でキラキラと穏やかに波打つ水面を
ぼんやりと眺めながら

いっそ死んでしまおうかとも思った
でも私が死ねば、今まで庇ってくれていた両親に
もっと迷惑がかかる

だから、死ぬ事は許されない

ただ途方にくれていた中で
茂みをかきわける足音が近付いてきた

誘拐?変態?
心拍数がめちゃくちゃあがっていたのを覚えてる

現れたのは
誘拐魔でも変態でもなく、そして勿論 家族でもなく
彼だった.....

「ばっかじゃねーの」

そう言った彼の息は荒く途切れ
ここを、私を...
見つけるべく
走って探しにきてくれていたのが伝わってきた。

小さな、小さな私の光
いつものように、彼の後ろをついて
トボトボと歩く

家へ帰るのは嫌なはずなのに...

この光があれば
なんか、大丈夫な気がした
何とでもなるって気がしたんだ


後になって知った
あの日、彼もその場にいたことを
そして私の事情もなんとなくは知っていたらしい


でも蔑んだ目でも、哀れみの目でも
その時彼は、私を見ていなかった

私を
ただの私として
付属する色々なものなんて関係なく
彼は見てくれていた



家へ帰ると、私が家を飛び出した理由なんて
考えもしなかったのかのように
夜中に外を出歩いたという理由で
父親に殴られた


「恥をかかせるような事をするな」


もうこれ以上
迷惑をかけないでくれという事だろう

もう期待はしない
だから、誰に何を言われても平気だよ

私にはこの光があるから

早く大人になりたかった

今まで通り、良い子を演じながら
その時をジッと待つ日々が続いていた


彼は中学にあがっても
決して態度は変わらず

私も相変わらず
いつも彼の後ろを歩いていた