その次に死を実感したのは
15歳の春である。

なぜそれが起こったのか
その詳細はまた今度にするが

地下鉄の車内での事だ。

その日、人生で初めての
恋人とのデートも終盤を迎え

緊張と披露が極限状態のまま
そろそろ帰路につく頃だった。

オシャレな
インテリアショップの雰囲気を
あたかも味わえているかのように
振る舞いながら

彼がそっと差し出した
お菓子の小袋を手に取って歩き

駅のホームに到着すると
電車を待ってそれを食べた。

食べ馴染みもある人気の
そのお菓子の味もわからぬほど

そして緊張でカラカラだった
口内をさらに渇かしながら
乗車する。

楽しかったね、
あれがよかったね、
なんて当たり障りのない
会話をしながら

ふと気付く自分の鼓動。

こんなにドキドキしていたっけ?
そう思う間もなく
次々と体に異変が噴出する。

吐き気、目眩、発汗、震え…

突然のことにパニックになる。

まだ異変は続く。

息苦しさ、呼吸がしにくい、
耳鳴り、視界がテレビの砂嵐のよう…

このまま死んでしまうのではないか、
怖い、苦しい、怖い、
こんな姿を見られたくない、
お母さん助けて、怖い。


これが後に私を十年ほど苦しめる
病気との出会い、
そして三度目の死の実感だった。