映画雑レビュー『永遠に僕のもの』70点 美しすぎるナチュラル・サイコパス!社会に収まるはずがない | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

『永遠に僕のもの』

公開日:2019年8月16日

上映時間:115分

その美しさから「黒い悪魔」「死の天使」と呼ばれた

アルゼンチンの連続殺人犯 カルロス・ロブレド・プッチの実話を元にした

ルイス・オルテガ監督によるクライムドラマ。

 




 

幼いころから他人のものを手に入れたがってきた

少年カルリートス窃盗こそ自分の天職であると悟り、

出会った同級生ラモンとともに様々な犯罪に手を染め

殺人まで犯すようになっていきます。

 

犯罪を犯す人間を描く物語の多くには

「なぜそれをするのか?」という背景が描写されますが、

本作の主人公 カルリートスにはそれが全くありません

まさにナチュラル・ボーン・キラーであり、

美しい容姿を持ったサイコパスです。

 

※幼児体型さがベストマッチ!まさに死の天使

 

 

そんな彼が学校でラモンと出会い、

彼の父のもと窃盗団の一員として街を駆け回り、

幾多もの殺人の果てに社会に「悪」として捉えられるまでが描かれます。

 

この作品の最たる魅力は

ファッショナブルでカラフルな映像

純粋に犯罪を犯していくカルリートスのキャラクター

青春映画たるルックを強く押し出している部分でしょう。

 

※犯罪映画なのにおしゃれな青春映画のよう!ラブストーリーもいいスパイスになってます。

 

 

70’sファッションが放つシルエットと色彩

犯罪映画とは思えぬ疾走感と風通しの良さを演出するミュージックによって

青春を謳歌するようなカルリートスの姿を描いていきます。

 

そして、なんといってもカルリートスの特出した純粋さです。

悩み、不満などが動機ではなく、生まれた時から有する潜在的な欲求を

行動に移していく彼の姿は純粋無垢、ティーンらしいエネルギッシュさに溢れます。

 

そんな彼が如何に社会にとって異質であるかを

善良な両親、はたまた犯罪一家であるラモンの家族との掛け合いで描くことで

「黒い悪魔」「死の天使」たるサイコパス像を確実に構築していくうまさにも驚く。

 

この作品にはいくつもしびれる部分がありましたが、

まずは道徳感の欠如したカルリートスの殺害模様とそれをあっさりと映す演出だ。

 

 

「人を殺す道具」という概念ではなく、

「撃つ道具」として純粋に銃を携帯し、

まるで挨拶代わりに銃口を向けるカルリートスは衝撃的だ。

「それよこせよ」とも言わず、

のび太を殴り倒し道具を奪うジャイアンだ。

※タバコの吸いたくなる映画!湯舟タバコは憧れる!

 

 

そして、恐ろしいのがあまりあっさりとその一連を見せる演出だ。

「人の命を奪う」意識のないカルリートス同様、

作品も「死」をフューチャーすることはほとんどなく、

結果のみをみせるようなあっさりさだ。

殺される相手のリアクション寄り、撃ったカルリートスの

アンニュイなリアクションで殺害を締めくくる脱分も印象に残る。

 

次に面白いのが、随所で醸される男色の雰囲気だ。

カルリートスとラモンのセクシャルさを感じさせる関係性は

BLが嫌いではない自分には持って来いだが、

おそらくそれらはカルリートスの『美しさ』の描写だろう。

性別を超越し、人を魅了するカルリートスの美しさを

男色演出を通して描いていたように思える。

 

また、面白いのがカルリートスを『愛される存在』に落とし込んでいる部分だ。

元となったカルロス・ロブレド・プッチは強姦などを行ったようだがそういった描写はなく、

どちらかといえば欲されるもの=愛されるものとして存在している。

無垢さに加え、周囲に愛されるカルリートスはやはり天使たる存在感を放っているように思えた。

 

 

そして、個人的に最高にかっこいいエンディングです。

オープニングと対を成す演出がなされているわけですが、

サイコパスと無垢の両立青春映画にも似た陽気さで幕を下ろすラストはかっこいい。

社会に収められようとしても収まらないカルリートスのその姿は

やはり美しく、可愛らしく、そして恐ろしいものでした。

 

さりげなくクライマックスでそう言った部分に魅入られた人が映し出されているのも

また面白いところです。

 

★★★★