映画批評「アサシン クリード」 40点 | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

「あまりの説明不足がシンプルな物語を複雑にしている」

 

映像クオリティやプレイの自由度が高くなるだけでなく、

物語や演出も格段な進歩を遂げ、

もはや「映画」とも言える作品が数々誕生している現在。

自分は本作の基となったゲームこそプレイしたことはないが、

実写栄えする作品だと思っていた・・・

 

死刑が執行されたリンチだったが、

彼は死ぬことなく、見知らぬ施設で目を覚ます。

状況を把握できぬまま、彼はアニムスなるシステムによって

自らの祖先、テンプル騎士団に立ち向かったアサシンの記憶を追体験させられる。

その祖先は禁じられた秘宝=エデンの果実のありかを知る人物だった ―

 

「アサシン クリード」

 

 

 

世界的にヒットを記録しているゲームシリーズ「アサシン クリード」を実写映画化。

祖先の過去を追体験しながらある秘宝のありかに近づいていくミステリーを

アクロバティックなパルクール・アクションを織り交ぜながら見せる。

 

「アサシン クリード」自体が発売当初より気になりながら手を伸ばさなかった自分は、

実写化が発表された時に、「これは観たい!」と思っていたわけで。

ワクワクしながら映画館へ行ってきましたが・・・。

 

物語を簡単に言えば、

 

秘宝である「エデンの果実」を手にし世界を征服しようとするテンプル騎士団が、

そのありかを知っているアサシンの末裔=主人公を捕獲し、

彼に過去を追体験させることで果実に近づく・・・。

 

というシンプルな物語。

そんなにシンプルなのに、これが如何せんわかりにくい。

 

ドラマパートが5割ほどを埋めているとにかく説明不足な印象。

組織間の対立関係や歴史、キャラクターの立ち位置が不明瞭なため、

善悪に境界線が引かれていないように思えてしまう。

冒頭こそ主人公視点で状況を説明しないのは良いが、

それを引っ張り過ぎているため、物語がどこに走っているのかわからないのだ。

物語の全貌がクライマックスでやっと理解出来たほどで、

初見者の自分には非常に見ずらい作品だった。

 

また、この作品はキーとなる「エデンの果実」なる秘宝を巡る話なのだが、

「自由意識=反思想を抑制するもの」というあまりにざっくりとしたもので、

どのように世界を手中に治めようとしているのかがわからないため、

正直誰の手に亘ろうと危機感を感じなかった。

 

どういうことかと言えば、

「この兵器が敵の手に亘ったら世界の人は死んでしまう」

みたいな被害の想像が出来ないため、「なんかやばいんだ」としか思えないということだ。

もはや、EVAの「人類補完計画」に匹敵するほどの説明不足だろうかw

 

また、説明不足と言えばアニムスのシステム。

過去を追体験するシステムであることはわかるのだが、

システムの危険性や搭乗する人物がなぜ動きをシンクロしないといけないのかわからない。

 

似たような作品と言えばやはり「マトリックス」

「マトリックス」はプラグを人体に差し込むことで仮想世界に侵入するわけだが、

そのシステムには「仮想世界で死ねば死ぬ」という分かり易い設定がまず説明されている。

それ故、仮想世界でのアクションはそのまま現実世界の生死を分かつ為、

物語に緊迫感が携えられていた。

 

しかし、本作のアニムスはどうだろう?まったくその危険性が説明されない。

突然、現実世界で搭乗者が生命の危機に晒されるわけだが、

どんな原因でそれに至ったのかがわからないのだ。

 

また、「追体験」という設定もアニムスというものをベールに包む。

その時代を生きていたアサシンの記憶、

少なくとも、エデンの果実をアサシンが手にするまでの記憶を「追体験」するということは

「そのアサシンはその時死なないのでは」ということだ。

後に書くが、いくらアクションそのものが面白くとも

「死なないんじゃないの?」と悟ってしまっていれば面白味は半減してしまう。

 

加えて、動きのシンクロだ。

アニムス搭乗者はアサシンを追体験することでその動きも現実世界でシンクロする。

アニムスの中でアサシンが戦えば、現実世界でも戦っている動きをする。

 

「追体験」というものなければ、

その体験に搭乗者の意志が反映されることが説明されていれば

現実世界での動きがアニムスに反映され、戦えるという分かり易さがあるのだが、

「アサシンの動きにシンクロする」という不必要にしか思えない逆ベクトルなため、

アニムスというシステムそのものが良く分からない。

 

そんな説明不足は元も子もないが、

エデンの果実のありかを知りたいだけなら、

「記憶を追体験なんてさせずに記憶だけ抜いて調べればいいじゃん」

とまで思ってしまった。

 

そんな物語なわけだが、アクションは面白い!

街を立体的に駆け回るパルクール的な動きは疾走感極まりなく、

また、その間に織り込まれるアクションも

テクニカルかつ手数が多いため、全体のテンポや流れを一切止めない。

 

ただしいて言えば、大胆過ぎるという事。

アクションシーンは申し分なく盛り上がりわけだが、

ゲームにあるような、「人目に隠れて殺していく」という潜入感で助走し、

もっとアサシン=暗殺者の部分を描いてほしかった。

 

 

思い返してみればシンプルな物語なのに、

観ているときはあまりの説明不足にどこに気持ちを乗せればいいのかわからない。

それならもっとアクションシーンだけを抽出して、

「アトラクションムービー」に振り切ってくれればよかったのにと思った。

 

★★