姫が入院した事で
姫とゆっくり向き合う時間ができました。
でも、それをきっかけに、ずっと私に言わないできた悲しい現実を姫から聞かされる事になりました
今から10年前
補助人工心臓装着中に起きた出血性脳梗塞
そして、その後遺症として言語障害が残る姫
人とコミュニケーションをとる場面では、自分の思いを言葉にして表出する事がうまくできません。適時適切な言葉を、頭の引き出しから瞬時に探し出せないので、必然的に黙りこくってしまうのです。
そして待たせている相手に対して申し訳ないという感情と焦りで湧き起こり、涙がポロポロでてきてしまう感じなのです。
姫は、入院するまであまり学校の事を話してくれませんでした。
私 学校楽しい? 姫 うん、まあ。
私 困った方ないの? 姫 ないよ。
私 今日はどんな事したの? 姫 別に特にない。
と、素っ気ない。
色々と聞いても、こんな感じなので、姫が話したくないのなら、無理に聞き出す必要もないし『まいいか』になっていました。
でも、本当はそうじゃなくて、助けて欲しかったし、訴えたい事を我慢していただけでした。
入院してからの姫は
突然『怖い!』と言って目に涙を浮かべて怯え始めたり、震え始めたり
寝ていたと思ったら、急にワンワン泣き始めたり
感情失禁というのか
とにかく様子がおかしいのです。
先生や看護師さんから優しく話しかけられても、視線を全く合わせようともしないし、押し黙ってしまいます。
院内学級の先生が挨拶にこられると、顔を強張らせて、泣き始めたり…。
最初は治療や検査、そして自分の病気がどうなるかわからない怖さで怯えたり、泣いたりしているのかと思いました。
でも、そうではありませんでした。
姫からゆっくり話を聞いていくうちに、元々通っていた地元の小学校の以前の支援級の担任、そして今の交流級の子達からの姫への態度があまりにも酷くて、学校生活が過酷なものだった事が明らかになってきました。
姫には、その時の光景がフラッシュバックしていたのです。
例えば、先生の説明が理解できなかったとします。
姫が、分からないと伝えたら、また先生が同じ説明します。でも、言語理解の難しい姫には、同じ言葉を使って説明を何度したところで、理解は得られません。分かるまで言葉を変えて説明するのではなく、理解できない姫に対して苛立ちを募らせる先生。姫にはその先生の形相が脅威でしかありません。だから、理解できなくても、分かったふりをするしかなく、その後に理解の程度を確認されたら、今度は『分かったってさっき言ったよね💢』とまた叱られる。
どちらを選択しても追い詰められる姫は、泣く事しかできず、そうするとまた『泣いたってしょうがないでしょ‼️』と怒鳴られる。そんな場面が何度も繰り広げられていたようです。
また、ある時には、交流級でのグループワークで、5分で話し合って、みんなの意見をまとめなさいと先生から指示が出ます。時間制限が設けられている中で、意見を出したくても言葉がすぐに見つからない、出てこない。すると先生が『早く何か意見言って‼️』とせき立てる。姫の障害を知らない子供達も姫を急かす。そして余計に焦って涙が出てくる。そしてまた涙する姫が先生に怒られる。
日々の中で、これらの事が常態化していたのだとしたら、姫にとって学校生活なんて地獄だったと思うのです。
5年生の子供達に、言語障害を理解させるなんて、とても難しい事なのは分かっています。
でも、支援級の先生には、なぜ姫が言葉が出て来ないのかを医学的にも説明したし、言語聴覚士さんにも入ってともらって、コミュニケーションの取り方を伝えてもらっていました。それなのに、言葉が出て来なくて困っていたり、理解ができなくて悩んでいる姫を責めたり、急かしたりされたのか、私には分かりません💢
そして、他の子供達に姫の事を伝えたり、待ってあげるように促しもせず、一緒になって姫を追い詰めていたのか。なぜサポートに入ってるはずの支援級の先生が、姫を苦しめたのか私には理解できません💢
姫が自宅でオンライン授業を受けていた時、姫の泣き声が聞こえてきた事がありました。
私がもう仕事に行っていないと担任は思っていたのでしょう。『あの時、分かったって言ったよね!なんでそんな事言ったの!お母さんにお願いして、何でもかんでも代わりに言って貰えばいいなんて大間違いだよ!』と、すごい剣幕で、感情的に姫を叱りつけているのです。
私は思わず姫のところに駆け寄り、オンラインの授業を中断させ、担任に抗議しました。
その日のうちに、謝罪に来られましたが、それは一時的で、その後も姫への厳しい当たりは続いていたそうです。
姫がなぜ、お家で話をしなかったか…それは、担任が、学校で姫に叱った事を、姫が私や母に報告することは、親に迷惑をかける事だと、口封じさせていたからです。
極度のストレスに晒されてきた事
姫の今回の病気を誘発させた直接の原因ではなくても、間接的な原因にはなっていると私は思っています。
命を削る程辛い日々だったのだろうと思うと、そんな状況である事に気づいてやれなかった自分にも腹が立ちます。
姫が受けた心の傷は簡単に癒えるものではありません。私も姫に二度とそんな思いをさせたくありません。
幸い、院内学級の先生方には心を開き始めた姫
姫の口から
『先生面白いから大好き』
『学校楽しい。前はこんな事思った事ない。』
と、前向きな言葉が出てくるようになりました。
言語障害は、目に見えない障害です。
姫は一見、健常児と変わらないから、小学5年生の女の子としての普通の理解や反応を求められてしまうんだと思います。
でも、本人は苦しんでいます。
目が見えない人に、見えるようになりなさい!と叱っているのと同じ。
うまく歩けない人に、早く歩けと急かしているのと一緒。
でも、それを何度伝えても理解は得られませんでした。
姫が元気になって退院しても、おそらく地元の学校に通わせる事はせず、支援学校への転校を考えています。
自分の存在が、周囲に迷惑なんだと思わせてしまうような環境になんか、私も戻したいと思っていません。せっかく助けて頂いた命なんだから、やっぱり姫には生きる喜びを感じながら、輝いて生きて欲しいです✨