その日は突然やってきました

5月30日

姫が、もう一人の命と共に歩み始めた日




前々日のプロムパーティーの余韻に浸り

顔にはまだネコのフェイスペインティングが残ったまま

いつもお世話になっているY先生が

日本で開催された学会から帰国される日だったので

朝の回診の時に姫の顔を見てもらおうと

二人でウキウキ待ち構えていました。

{9E75070F-8F95-4437-BCE7-05CF150F7D90:01}


そしてY先生登場

おっ姫ちゃん、どうしたんや~顔がネコになっとる!!!
そんな顔して、そのままドナーが見つかったらどうする?
その顔のままオペ室行きになるかもしれんな。


ママン
まさか~でも、そんな事があったら凄いですね~


と、いつもの何気ない回診での会話、そして光景でした。


その6時間後に先生が言われた事が現実のものになるとは、思いもせず…




相変わらずのネコ顏姫

可愛いからもうしばらく消さないでこのままにしようよ!

と、スタッフの提案を受け

ネコのまま午後の時間をまったりと

プレイマットにおもちゃを広げて遊んでいました

と、その時


トントントントントン!


と、ドアをノックする音


見ると、循環器科のS先生と、Y先生、そしてPAのケイティ。


Congratulations!


ニコニコとした三人の表情に上記の一言


ママンは、何が起こっているのか状況を飲み込めず


え?


と、すっとぼけた返事。


姫ちゃんにピッタリのNew Heart が見つかったのよ!


と、循環器科のS先生。


姫ちゃんにとってパーフェクトの心臓よ。本当は、二日前にもお話があったんだけど、少し気になるところがあったから、それは見送ったの。でも今回は何も言うことがないわ!


と。


そしてその後に続けられた説明が


ドナーはまだ4ヶ月の赤ちゃんだという事


夢にまで見て、ずっと待ちわびてきたこの瞬間だったけれど


最愛の我が子を突然亡くされたご両親の悲しみが急にどっと押し寄せ

ドナーに巡り会えた喜びよりも悲しさで

涙が溢れでてきました。



愛しい我が子を喪失するという強い悲しみの中で

その一部を、次の命に託そうとしてくださったご両親の決意

その思いを無駄にしないように

頂いた尊い命のギフトを

姫と共に

大切に大切に愛し慈しんでいこうと

ママンはその時、心に強く誓いました。


ドナーの心臓摘出には

渡航の時からずっと毎日お世話になっているY先生が行って下さるとの事

渡航した時から、姫の心臓は僕が取りに行ってあげたい

と、言って下さっていたので

Y先生が帰国されたタイミングでのドナーの出現は、まさに必然だったんだと思いました。




姫の移植に向けた準備が慌ただしく始まり

ネコ顏の姫も、いささか興奮気味でした。


移植前の最終チェック
採血38cc
胸部レントゲン
心電図
心エコー

一連の検査を終えたのは夕方の18時頃

心臓の到着に合わせて

姫がオペルームに出棟したのは

5月30日の深夜2時でした。

すでに夢の中の姫と共にオペルームの前室へ

麻酔科の医師から

Kiss!

と、優しく促され

姫を支えて来てくれた姫自身の心臓と補助人工心臓に感謝の気持ちを込め

手術が滞りなく終わり、無事に戻ってくる事を祈りながら

姫のおでこにそっとkissをしました。

麻酔科の医師は

ネコのペイントがまだ少し顔に残り

気持ち良く眠る姫をそっと抱き上げ

オペルームの中に入っていかれました。