───とある休日、セスさんと私は、セントラル地区に遊びに来ていた。


「可愛い女の子とのショッピング、夢だったのよー! 今日はアタシが、アリスちゃんのためにコーディネートしてあげるわね ♪」


さやか 「お願いします!」


(クレイドルに来てからドタバタだったから・・・・・・久しぶりだな、お洋服を見るなんて。

 女友達とのショッピングみたいで、楽しい!)


「今はコルセットの必要ないティーガウンも流行ってるし、選択肢が多くていいわよね」


さやか 「うん! 私、普段着にもできるようなワンピースが欲しいんだけど・・・・・・あるかな」


「そうねえ。 これなんてどうかしら」


セスさんが選んでくれたのは、春らしい淡い色合いの花柄ワンピースだった。


「あとこのネックレスを合わせて・・・・・・ピアスも、お花で統一しましょうか!

 名付けて、『ラブフェアリー春の花祭り』コーデよっ」


さやか 「わあ、コーデ名はよくわからないけど素敵!」


「さっそく、試着してきてちょうだい。着てみないとわからないこともあるわ」


さやか 「うん、いってきます」


浮き立つ気持ちを胸に抱えて、試着室で着替えていると・・・


さやか 「・・・・・・あれ」


「アリスちゃん? どうかした?」


さやか 「ネックレスが服にひっかかっちゃって・・・・・・」


「あら、大変。手伝いましょうか?」


さやか 「お願いしていいかな?」


(着替えは終わってるし、大丈夫だよね)


試着室のカーテンを開けて、セスさんに背中を向ける。


「ああ、レースに留め具が引っかかっちゃってるわ。 よくあるわよねー。でも髪まで巻き込んでなくてよかったわ・・・・・・はい、取れた」


さやか 「ありがとう」


「あ、待って。 リボンはこうした方が今風よ」


器用な指先がリボンを解き、あっという間に綺麗に結び直してくれる。


さやか 「セスさん、なんだか・・・・・・手慣れてる?」


「あら、どうして?」


さやか 「さっきから、女の子の服に詳しいから・・・・・・」


(男の人って、コルセット事情まで知ってるものかな?)


さやか 「あ。 そっか、セスさんが自分で着ることもあるからか」


「ちょーっと待って! それは違うわ!

 アタシは確かにキュートだけど、心も体もごらんの通り男なんだから!」


さやか 「そ、そうなんだ」


「そうよう。 だからね・・・・・・」


そっと唇が近づいて、次の瞬間、耳元に低い声が落ちた。


「もしかしたら、脱がし慣れているのかもしれない」


さやか 「えっ・・・・・・」


(女の子の服を、脱がし慣れている・・・・・それって)


思いもよらない言葉に、顔が熱くなっていく。


「なんて、ね。 まあ細かいことは気にしなーい」


セスさんは鏡越しに微笑むと、ぱっと離れていつも通りの明るい声を上げた。


(冗談、だったのかな)


「そうだわ! ヘアアクセも選ばないと。 ほら、行くわよ!」


さやか 「っ、うん」


(セスさんは、頼りになるオネエさんで、女友達みたいだと思っていたけど… もしかしたら・・・・・・まだ知らない一面があるのかもしれない)


私の手を引くセスさんの手は大きくて───

男の人なのだと、強く感じた・・・────。