チェスの戦術書を研究する目的は、
まずは自分の戦術のバリエーションとその深さ、確かさを身につけることであるが、
さらにそのプロセスを通して、
相手がどの戦術を取ろうとしているのかを知ることにつながる。
すなわち、「敵を知り、己を知る」ということである。
自分の一手の「確かさ」と根拠を突き詰めることで、
相手の出方すら見抜く。
そういう研究の深さは、まさに武道の稽古そのものというべきであろう。
剣道の全日本覇者が試合の準備においては、
「相手の剣道を研究するだけでなく、相手の剣道を真似てみる」という方法を勧めている。
単に画像等を通して相手の動きを知るだけでなく、
自分の身体を通してそれをいったんやってみることを通して、
相手の戦術の強み弱みを体感するのである。
そしてその戦術の前提となる戦力の彼我の差と違いについても敏感になることができるだろう。
戦術研究の要諦は、まさに孫子の兵法的と言うべきであって「敵を知り己を知る」に通じる。
繰り返しとなるが、それくらいの深さを持って取り組むべき領域だと言えるだろう。