ボスがさや君と話がしたいそうだ。この後、CEOルームへ行ってくれるかな。
T部長が、私を刺激しないようになのかゆっくりと極めて優しくそう言いました。
ついに、きた・・。と思いました。
CEOルームとは、最上階にあり、ボスもほとんど不在の為、その部屋が使われるのは数えるほどです。
私も、入社時に新人達が召集され、中に入って挨拶した以来入った事はありませんでした。
そんなめったに使われない部屋を、いつしか社員達はそこをCEOルームと言っていました。
フロアのみんなは、パソコン画面に向かってもくもくと仕事をしているようにみえましたが、
その誰もが、ピリッとした空気になったのを私は感じられずにはいられませんでした。
みんなは、聞こえないふりをしていましたが、おそらくここのいる全員が、何かがある・・。
と思ったはずです。
CEOルームに行くと言うのは、そういう事なのです。
全国を忙しく飛び回るボスは、ほとんど社におらず、今日だって会社にいるとは思っていませんでした。
T部長に言われて、初めて今日はボスがいることを知りました。
はい。わかりました。
平静を装いましたが、私だって何を言われるかドキドキしているのです。
席を離れて、このフロアを出ようとしたとき、一瞬錦戸君と目が合いました。
小さく頷いたように見えましたが、気のせいだったのかもしれません。
また、パソコンのキーをすごい勢いで打つ錦戸君の姿がありました。