トイレに行った夫の後ろ姿を眺めながら思いました。

 

以前は、女とやり取りをするんだなとか電話をしに行くんだなと思う度、

いたたまれない感情になって、早くその時間を奪って女と夫の絆が深まるのを阻止しようと

思っていたこと。1分1秒でも、女と夫との時間を奪ってこちらに目を向けて欲しいと

思っていたこと。

 

つい数か月前の気持ちです。

 

今は、その時間を過ごす夫を少し距離をおいて見守れるようになっていました。

 

私に嘘をつき、女に嘘をつき、女との口実合わせに時間の組み立てを必死にしている

夫が哀れにも、気の毒にみえました。

 

女もまた、連絡のとれなくなった時間を思考のほとんどを夫で支配して、

夫からの連絡を今か今かと待ちわびているのでしょう。

 

夫も女もそのような事に必死になって時を過ごし、この先の未来にお互いの幸せがあるようにはみえませんでした。

 

夫と女のやりとりが多ければ、多いほど夫と女の絆が深まってしまうと思っていた昔の私の考えもおそらく違うのでしょう。

 

そのやり取りに、嘘が入れば入るほど、そしてその嘘が自分を守るための嘘であればあるほど、絆が深まるどころか、疑念や不安に変わってその感情に押しつぶされていくのです。

 

そしてそれは、ある時にはっきり形になって表れて、今までの想いがなんだったのかというほどにあっさりと崩れる破壊力をもって登場してくるのでしょう。

 

私は、その時を待つのも一つの手立てなのかもしれません。

 

ずっとずっと、自らの力でどうにかして2人の縁を切ろうと必死になっていました。

不倫は、必ず嘘が絡む関係です。

嘘をつく関係は、それがいつか形になって表れる時が来るのです。

 

形になって表れた時、本当の勝負所なのかもしれません。

 

夫は、何食わぬ顔で戻ってきて、注文したハンバーグをパクパクと食べていました。

私も、スープカレーを美味しく食べました。

 

久しぶりの2人だけの時間は、どこかぎこちなく、それでいてずっと前から存在している安心感がありました。

 

夫婦の絆は、嘘や不安のない世界で、一緒に美味しいものを食べて、お互いを尊重しながら過ごしてこそ、深まっていくのかもしれません。

 

そのことに気づかずにあの時、私と夫は違う道を歩き始めてしまったのでしょう。

 

 

~みなさま良いお年をお迎えください2017.12.31 さや