いつもの所にまた、3人で集まりました。
店内は、BGMのジャズが心地よく流れていましたが、空席が目立ち閑散としていました。
田舎のこの町には、唯一遅くまで開いているこのレストランでさえ平日となればこの寂しさなのです。
女は、夫と毎日のように外食していたようです。都会暮らしの女は、おしゃれなレストラン探しに余念がなく、雰囲気の良い所を見つけては夫と食べ歩きをしていたようでした。
そのことを知ったのは、ずっと後の事ですが、メールからはその頃の思い出を懐かしむ女が、会えなくなってからも夫といつの日か行ける事を楽しみに話しているのが頻繁にあり、とても辛くもありました。
花さんと錦戸君が席に着いたとき、いつも同じメニューだけど、この料理を気心知れた友とそして家族と何気ない会話をしながら食べる時間が一番自分にとっては幸せな時間なのかもしれない。そう思いました。
もう一度、夫の心を家庭に戻す事、その為に、最善を尽くそうと思いました。
あの・・・。まず駅の改札で、2人があった時、遠くからそれを花さんが確認してください。
すぐこちらでも状況が分かる様に、LINEを使って連絡をとり合いましょう。
話し始めたのは錦戸君でした。
あと。花さんは、証拠として写真撮影役をやっていただければと思います。
今度は、LINEで連絡入り次第、私とさやさんが2人で現場に向かいますから、その間も出来るだけ多く撮影をお願いします。
さやさんが前方で私が後方を歩きます。さやさんがまず声かけをしてください。
「どういうこと?」とかそんな感じでいいかと思います。
その後、夫さんの行動にもよりますが、私がとにかく、Aさん抜きで話がしたいと言いますよ。
Aさんには、その場でお引き取り願いましょう。
でも・・・Aさんが帰らないと言ったら?
それならそれで、どこかで待つように言いましょう。
とにかく私たちは、夫さんと話があることを強調しましょう。
私の勘なのですが・・・、夫さんもこの状況でAさんを含めて話をする勇気ないでしょうし、2人で逃げるというのもリスキーですし、おとなしく従うのではないでしょうか。
そう話す錦戸君に、確信に似た自信のようなものを感じました。
うん・・・。
とにかく、私たちだけで話せる場を作りましょう。近くの喫茶店でもいいですし、そこに行ってから花さんも合流しましょう。
夫キレたりしたらどうしょ?迷惑かけちゃうな・・。
キレてもいいのではないでしょうか。もともと嘘をついているのは、夫さんですし、こちらは正論をいくらでも並べられますよ。
でも今の夫は、正論並べた所でなんとも感じないのかもしれない・・。
それならそれで、さやさんが今後どうしたいかを聞きましょう。
状況が状況ですし、もう逃げたり、嘘ついたりは出来ない事を夫さんに分かってもらわないといけないと思います。メールも、全部把握していたと。
うん・・・。そこまで来たらそうだよね。
私が言うと、花さんの口を開きました。
夫さんに現状を分かってもらう事は、絶対に必要だと思う。都合よくどちらにもいい顔して付き合うとかありえないんだからさ。
これ以上続けるなら、さやちゃんも仕事も失うと言う事をはっきり分からせよう。
そのうえで、夫さんはどう判断するのか私も聞きたい。
ずっと思っている事なんだけど、夫さんはさやちゃんを失う事が一番イヤだと思うんだ。
え?そうですかね・・・?
小声で話していたつもりでしたが、3人ともいつしか口調は熱くなっていました。
上手く行くのかは、誰も分かりませんでしたが、強い気持ちで立ち向かおうとする思いは3人共同じように見えました。