どうしてこんなにもなっても離婚されないのですか・・・?お子さんの為ですか?

 

ずっと聞きたかったことなのかもしれません、錦戸君が長い間をおいて訊ねました。

 

錦戸君の言葉が、痛烈に私の胸に刺さりました。

 

みんな誰もがそう思うでしょう。同じ会社の既婚者の人と付き合って、発覚後も分かれずに

私がどんな状況になっても、夫は水面下で続けて、錦戸君だって不思議に思うはずです。

このような状況になってもまだ、離婚という考えがない私に疑問をもって当然だと思います。

 

なんでだろうね・・・・。分からない・・・。

 

そう答えるのが精いっぱいでした。錦戸君には、言えませんでしたが私はきっと夫を愛しているんだろうと思います。

あんなにダメな所がいっぱいで、私の事など気にもとめない夫の事を。

それでいて、なぜこんなにもこの気持ちにしがみついている私がいるのか自分自身で分からなくなる時もあるのです。

 

そうですか・・・。それでもさやさんはこの先、夫さんと共に歩んでいこうと?

 

今は、そう思っているけど・・。不倫をしない事が前提かな・・。もしこのままの状態が続くなら無理なのかもしれない・・。

 

・・・・・・・・・・・・・。とりあえず、会社の判断を待ちましょう。もしなんらかの動きがあって、夫さんが辞表を提出したらどうしますか?

 

どうしよう・・・。

 

辞表提出されて、女ともきれないという最悪のパターンも考えられます。

 

うん。

今日の錦戸君は、色々と核心をついてきました。

 

会社で動けば、女が手を引くパターンもありますし、夫さんが止めるパターンもあるかとも思います。もう何が起きてもおかしくないと思いますので、今のうちにじっくり考えた方がいいかもしれませんね。今後の事。Xデーも近いですし。そのあたりも詰めた方がいいですね。

 

うん・・・。

 

こちら側は、もう一度労務関係の事を調べておきます。会社も夫さんもどう動くかはわかりませんから、会社を辞めて逃げてしまう事だけは避けないといけないですし。

 

ありがとう・・。錦戸君は、優しいんだね・・。

 

いや・・・。ただそう思っただけですから・・・。

 

遠くの方で、オフィスのドアが開閉する音がして、どちらともなく話を止めました。

 

じゃあ。また。

 

うん。また。

 

階段の窓の外には、風に吹かれて散った桜の花びらがひらひらと回転しながら落ちているのが見えました。こうやってどんどん季節は変わっていくのだな。ふとそう思いました。