仕事始めからしばらくして、本社から会長がやってきました。

 

社員達が次々に会長のもとを訪れ、新年の挨拶をしました。

 

今年1年が、会社にとってもみんなにとっても素晴らしい発展の年になるように、個々の力が試される時ですよ!と会長はにこやかに社員達に諭していました。

 

個々の力か・・・。

 

無気力の私は、いったい何が会社の為に出来るだろうか。。家庭での事に悩み、仕事にも影響が出ているこの私を、会社はどう思うだろうか・・・。

申し訳ない気持ちでした。早く、普通の生活がしたい。早く今までの自分に戻りたい。そう強く思いました。

 

午後の仕事も終わり、帰宅の準備をしていた時に、錦戸君から

さやさん。会長がお呼びですよ。会長室まで行ってください。

と言われました。

錦戸君は、表情ひとつ変えず、言い終わるとデスクに戻ってしまい、また忙しくパソコンを打ち始めてしまいました。

 

なんで?そう聞こうと思いましたが、錦戸君がそんなこと知る由はなく、会長からの頼まれごとを伝達したにすぎないのは分かっていました。

 

会長からの呼び出しは、たいてい社員個別に面白い戦略的話がある時か、業務態度について注意を受けるときがほとんどで、おそらく私は後者の方だという事は容易に推測できました。

 

ここの所の勤務態度について他の社員から、会長の耳に入ってしまったのでしょう。少しドキドキしながら、会長室のドアをノックしました。

まかり通らない単純な言い訳を用意して。