2004年9月29日の記事
ここで紹介している古いガラスびんは、8月にcafeSAYAにて開催したミニイベント『びん博士コレクション☆マーケット』で預かっているびんたちです。
展示をするために、びんを並べていた時。
このびんに触れた瞬間、なんだか他の硝子より温度が高いような気がしました。
黒いその色は持っている絵の具を全部混ぜちゃった♪という
感じの色で、陽に翳すと茶色にも見えるし、深い翠色のようにも見えました。
形も大きさも、「普通の牛乳びん」と同じです。でも、他にもある牛乳びんは大正期のものでも3500円程度なのに、この黒い牛乳びんのようなびんは10000円という定価シールが貼られていました。
ここで考えます。
(販売促進の考え方でいけば)牛乳びんの黒はあり得ない………。
牛やサイロや牧場のイラストはあっても黒いびんはあり得ません。
しかも、遮光を目的としたようなこの色合い。一体何のびんなんでしょう。
びん博士に聞いてみたところ、やはりそれは牛乳びんでした。
昭和10年代のもので、ちょうど太平洋戦争が始まる頃です。物資が不足していたため、寄せ集めの材料で作られたものだそうです。
このびんで飲む白い牛乳は、あまり美味しそうなイメージではありませんが、この後、日本は開戦。牛乳はもちろん、食べるものも着るものもないような時代に突入します。その後、人々が牛乳を口にすることができるまで、確実にブランクがあります。
それを思うと、戦争期、そして敗戦という暗い時代へ向かう予兆のような色をしたこのびんが、牛乳びんであることに、さらに言いようのない皮肉さを感じてしまいます。