幼い頃、母親から「絵の具や鉛筆の芯をなめるな」(馬鹿にするなという意味の「なめるな」ではなく、口にするなという意味)といわれていました。子供達の間で「絵の具は甘い」といううわさが広まり、「どの色が一番甘いか」、なんてばかげた実験が流行ったためです。すぐに試したがる性格の娘に、母親は「鉛筆の芯には鉛毒がある」とか「絵の具の黄色は硫化ヒ素なんだ」なんて言って実験しないように脅していたのです。
これから、「色」のモトが気になる癖がついてしまいました。
何十色もある色鉛筆のセットを買ってもらって、毎日眺めていました。
色素として衝撃的だったのはカーマインです。「色」のモトと同時に「色」の名前にも興味があって、ある時、「カーマイン」という何とも魅力的な響きに惹かれ、百科事典で調べてみました。
しかし、「カーマイン」の色のモトはなんと、虫だったのです。
《コチニール(カイガラムシ)のメスから取れる染料でカーマインの他、カーミン、クリムゾン、クリムゾン・レーキなどと呼ばれることもある》
……そんなことが書かれていて、サボテンにびっしりくっついたコチニールの写真が掲載されていました。
それから、赤い色の駄菓子は食べないようにしたものです。
現代では高価な天然顔料に代わって人工的にいろいろな鮮やかな色が作られていますが、はやり、自然の色はすごいなあと思います。特に、最近入手した2つの鉱物標本の色合わせにはやられました。
これはHeulandite。輝沸石です。結晶は薄い板が重なったようで、板の面に平行な方向に強い真珠光沢が見られるので、輝沸石と名づけられました。赤の「色」のモトは鉄です。鉄による発色。
ボルドー色と、玉髄のくすんだ水色の色合わせが、妙に好きです。
インド、マハラシュトラ州産の魚眼石(Apophylite)と束沸石(Stilbite)です。
凍ったような白半透明の大きな結晶と、いくつかの透明で小さめな結晶が、玉髄のくすんだ水色の上に並んでいます。
その合間に淡いピンクをした薄い板状の束沸石が点在していて、こんなに儚げで可愛らしい色合わせ。
そのうち、WEBサイト制作などに使ってみたいと思います。