高円寺「前衛珈琲処 Marching Mole」で開催された、映像作家かわなかのぶひろさんのイベントゲスト出演すると、前日、突然、びん博士から電話がありました。
急遽、Mixi(ボトルシアターサロン コミュニティ)にイベント情報を掲載して、翌日(って、ライブ当日)土曜日カフェを早めに店じまいしてレジュメを作り、どたばたと会場へ向かいました。
不思議な空間の中、かわなかのぶひろさんが手回し式の蓄音機で戦前のSP盤レコードを披露する、「映像の地下水脈・番外編#2」。
ハンドルをぐるぐる回して発条を巻きます。
スピーカー内蔵(だと思う)のくねった形の針のアーム。先についている鉄針がレコード盤の上に置かれると、ザーッという音が流れ始めます。よく、LPレコードの音は炭酸がパチパチとはじける音に似ているといわれますが、おそらくそれはダイアモンド針の作る音で、鉄針が生む音は、まるで蓄音機の中で小雨が降り始めたようでした。盤の状態によっては小雨ではなく、夕立のようでもあり、ふと、今夜の天気予報で23区に洪水警報が出ていたことを思いだしました。
変わったハワイアン(ジンタに使われていた曲がハワイアン風にアレンジされたもの)や、大橋節夫の「星の降る窓」や、淡谷のり子とルイ・アームストロングの「セシボン」の聴き比べ。「別れのブルース」「ダイナ」「ダイナ(浪花節調)」、活弁のBGM……。バラバラ死体のガシャポンや頬に甲虫を貼り付けた少女のイラストが並ぶ「前衛的(?)」 空間に流れるSP盤の音楽は <これはすべて、ゲリラ雨の夜に見た夢なのではないか> なんていう錯覚に陥らせるのでした。
一種の麻薬作用のようなこの雰囲気は、一体何から発せられているのだろうかと、ずっと考えていたのですが、それは「衛生博覧会」のイメージ。もちろんタイムリーで見たわけではないのですが、文学部学生だった頃に読んだ小説や文献にあった「衛生博覧会」のすりこまれたイメージ(多分に想像力が加算されて脚色されたもの)と見事に合致していたのです。
SP盤から流れる男性歌手の歌声がどれもびん博士に似ているなあと思っている中で、博士の登場となりました。
平成元年に亡くなった博士の弟・光二さんが遺したオープンリールの録音の中から2曲が披露されました。光二さんの曲を公の場で演奏するのはこれが初めてです。しかも、演奏は、博士の次男・真太くんと一緒という試み。
真太くんの澄んだ声は、博士のノスタルジックな声と(多分、親子だから)見事に調和して、完璧なユニットのように感じました。
ライブの音源や動画はボトルシアターサイトにて、そのうちに紹介してみたいと思います。
博士と真太くんの演奏の間、無造作につるされた麻(?)の布に投影された、かわなかさんの映像も、不思議な立体感を醸し出していました。