娘の闘病記㊲ 減薬 | 子供を亡くして~生まれてきてくれてありがとう。

子供を亡くして~生まれてきてくれてありがとう。

2013年5月、難病で13年間闘病してきた娘が天に旅立ち、残された私には毎日が生き地獄。でも娘が私に残してくれた20年間の思い出は私の大切な宝物です。娘が描いた絵がhttp://www.pixiv.net/member.php?id=4025133にアップされています。

2003年、娘が生命の危険を宣告され、
2度目の長期入院の時に、
岡山大学病院の医師に教えてもらい、
翌春から7年間飲み続けていたコルヒチンには、色々と副作用がありました。

細胞分裂阻害薬なので、成長障害があり、
娘は18歳になっても、
身長140cm、体重30kgで、初潮も訪れず、
ほんの少し胸はふくれているものの、
ほぼ子供の体型でした。
娘も年頃の女の子、
長じるにつれ大変気にするようになりました。

他にも肝機能障害や腎臓障害、
再生不良性貧血など、
重篤な副作用がでる可能性がありました。

長期間飲めば飲むほど、
私は不安になってきました。
この薬は、反対する教授に頼み込んで、
処方してもらった薬です。
もし大変な副作用が出たらどうしよう?
そうなったら、
私は自分を許せないのではないか。
しかもこの薬が効果があるかどうかも、
不明なのです。

おまけに徳山の牧師にも、
薬は害だ、やめなさいと、
事あるごとに言われ、
だんだん私はこのまま飲み続ける事に、
疑問を感じるようになりました。

それまでも、前の主治医と減薬について、
話し合った事が何度かありましたが、
とりあえずこの薬を飲むようになってから、
病態が落ち着いていることから、
主治医も減らす決心がつかず、
このままもう少し様子をみましょうか、
でいつも終わってました。

8月、娘が18歳の誕生日を迎えたのを機に、
新しい主治医に、
減薬のことを打診してみました。
するとこの医師はいともあっさり
「いいですよ」と言うのです。
私は拍子抜けしました。
前の主治医はいつも考えこんで、
なかなか結論を出さなかったのに。

今から思えば、こんなにあっさり言うのは、
この医師は全く事の重要さをわかってなかった、というのがよくわかります。
でも当時はそれがわかりませんでした。

医師は
「減らすのなら減らしますよ、
どうします?」と聞きます。
迷った末に私は遂に
「ではお願いします」と言ってしまったのです!

一度に減らして支障が出ると困るので、
とりあえず1日朝夕1錠ずつ飲んでいたのを、
夜は半錠飲む事になりました。
減らしても腫瘍が増大しないか、
1ヶ月後にCTを撮って、それを見てから、
その後の方針を決める事になりました。

そして1ヵ月後、CT画像を見た主治医は、
「腫瘍の大きさは変わってません。
ではもう少し減らしますか?」と聞き、
更に朝の分も半錠になり、
全体の薬の量が最初の半分になりました。

ところが夜、薬を飲む際に
「明日からは朝も薬半分になったからね」
と娘に言うと、娘は泣きだしました。
「そんなに薬を減らして、
病気が悪くなったら嫌だ」
まさか娘がこんな反応をするとは、
思ってもいませんでした。

この薬は苦いので、最初に飲み始めた頃は、
娘は飲んだふりをして、
こっそり捨てていた事があり、
私にこっぴどく叱られたものです。
それに薬のせいで成長障害になり、
その事を気に病んでいたから、
減薬して喜ぶものと思っていました。

正直私は気を悪くしました。
娘のためを思って、
医師に減薬を頼んだのに、と思い
「もう先生に頼んだんだから」
と冷たく言うと、
娘は泣きながら、自分の部屋に行きました。
ベッドに横になって、
声をあげて泣いている娘の姿が、
今も瞼に焼き付いています。

なぜあの時私はあんなにもかたくなに、
減薬にこだわったのか。
娘の意志を尊重せずに、
あんなに嫌がる娘に、
減薬を強要してしまったのか。

私は自分が許せません。
娘の意志を無視しておいて、
何が娘のためでしょう。
単に自分の意志を通したかっただけ、
今更主治医に薬の量を戻してくれと
言いたくなかっただけです。
そしてそのツケは私に返らず、
可哀想な娘に返ったのです。

せめて夫の意見を聞くべきでした。
この時確かに少し自信を無くして、
夫に電話したのですが、
「薬を減らして
腫瘍が大きくなる可能性はないのか?」
と聞く夫に対し、
その可能性はあるけど、
今日CTで確認して大丈夫だったし、
将来もし悪くなったらまた戻して貰えばいい、
このままだとずっと大人の身体になれないし、
他に重篤な副作用が出る可能性もあるから、
と減薬することの正当性をひたすら説き、
無理矢理夫の同意をとりつけたのです。

この罪悪感は一生、
いつか娘に再会する時まで
私が抱えていかねばならないのです。
どんなに苦しくても、
自分が撒いた種ですから。

娘のグッズ売ってます