【 終活 】 山や森林に散骨したい | 行政書士ノチカラ

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東京港区のインドネシア専門行政書士 廣瀬さやか のブログです。

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前回は、海に散骨する場合についてお話しました。

同じ自然であっても、
山や森林などの陸地に散骨する場合は、
海に散骨する場合とはちょっと事情が異なります。

というわけで、
今回は、散骨についての陸地編です。



■ 所有権の問題


そもそも、
陸上の土地には、基本的に所有権が及んでいます。

ここが海との違いです。
海は、本来、所有権が及ぶ対象にはなりません。

(ただ、海の場合でも、
一定範囲を区画して、他人が勝手に利用するのを排除して、
自分だけが利用・処分できる状態にすれば、
所有権の対象となり得ます。)

なので、
他人の所有する土地に無断で散骨すれば、
それは所有権を侵害することになります。

したがって、
山や森林などの土地上に散骨する場合には、
その土地の所有者の同意が必要です。



■ 自宅の庭に散骨してもよい?


では、
自分の所有地である、自宅の庭に散骨することは
問題ないでしょうか?


まず、
自分の所有地で、
自分が了承しているのだから、
所有権の侵害はありませんね。


次に、
墓地、埋葬等に関する法律第4条1項では、

焼骨の埋蔵を、墓地以外の区域に行ってはならない

旨規定されています。


① 「墓地」について。

墓地を作るには
都道府県知事(市長・区長)の許可が必要です。

さらに、
東京都の条例では、
墓地の経営者は、
地方公共団体、宗教法人、公益法人に限定されています。

したがって、
個人が自宅の庭に墓地を作ることはできません。


② 「焼骨の埋蔵」について。

散骨は、焼骨を撒くもので、土の中に埋めるわけではない、
だから「埋蔵」ではない、
と解釈すれば、
墓地埋蔵法にも抵触しません。


が、
現実的な問題として、
人の価値観は様々ですから、
ご近所の方々への配慮も必要です。

隣の庭には散骨されていると知ったら・・・
隣の庭から散骨した粉末が風で飛んで来たら・・・
気分を害する方もいるでしょう。

それがきっかけでトラブルにもなりかねません。


自宅の庭のケースではありませんが、
業者が森林で散骨場を建設しようとした際に、

農作物への風評被害の懸念や、
周辺住民からの苦情などで、
実際にトラブルになったケースが多々あるようです。



■ 条例での規制


そうしたトラブルがあった自治体の中には、
陸地での散骨を条例で規制しているところもあります。


例えば、長野県諏訪市。

散骨場を経営する場合には、

市長の許可が必要なだけでなく、

申請にあたって事前に、自治会を対象に説明会を開催し、
その同意を得なければならないとされています。


静岡県御殿場市でも、
同様の条例が制定されています。


周辺住民の同意を得るというのは、
実際はかなり難しいのではないかと思います。



■ まとめ

山や森林に散骨したいという場合、

まず、その土地の所有者の同意が必要。

同意を得られたとしても、
その周辺住民の宗教的感情への配慮が必要。


法律上直ちに違法ではないとしても、
実際上のトラブルの懸念が拭えないというのが
現状のようです。

陸地での散骨は
海ほど簡単にはいかないようです。



もうすぐお盆です。
ご先祖さまの供養とともに
何か考えるきっかけになれば幸いです。