友達が、家に来るなり「これ」と、固形はちみつを渡してくれた。
サヤは新宿の地下でしか見つけられなくて、出会うと必ず買いだめしていたもの。
その事を話したかどうかは覚えていない。
でも連日の歌稽古に、のどを気遣って、棚にあったのを買い占めて来てくれたらしい。
思い出しては嬉しくて、今日の歌稽古の後に、お守りのように一個、口に入れた。
難しくて解らなくて悔しくて、考え込むのどに、はちみつの甘さが優しくて、子供のように泣きそうになった。
何万回、心配してると言われるより、心遣いが伝わった。
百万回、愛してると言われるより、暖かな気持ちを貰った。
この固形はちみつが好きだって、たぶん、話したんだと思う。
サヤも何気ない振りで、さりげない優しさを、あげられる人になりたい。
強く思った。
さやっ。