森田side










森田「保乃ちゃん」



田村「なに?ひぃちゃん」



森田「クリスマスって…何する予定?」



田村「あ、どうせ保乃が一人やと思ってんやろ?」



森田「え?いや、違うよ」










幼馴染みの保乃ちゃんは少し歳が離れている。





そうなると予定が会わないことも多いし、
一緒に過ごす時間も多くはなくなっていた。





だから、何かを一緒にしたいときは
先に予定を確認するようになった。





断られる確率の低い方法を自分なりに見つけてた。










田村「ご想像通り今年も一人なんよなー、
残念ながら空いとるよ」



森田「あ、じゃあ、
森田と一緒に過ごすのはどうですか?」



田村「ひぃちゃんも一人なん?」



森田「まぁ」










本当はお誘いされたりもしたけど、
私は保乃ちゃんと過ごしたかったから。





無理矢理にでも空けておいたんだ。





保乃ちゃんに予定がないならあとは押すだけ。










田村「ええよ、どこか行く?」



森田「いいの?!」



田村「ふふ、そんなに嬉しい?(笑)」



森田「嬉しい!
保乃ちゃんとお出掛けするの久し振りやけん!」










やった、嬉しい。





保乃ちゃんが私の誘いを受けてくれた!





そうと決まればどこでなにをするか、
ずっと練ってきた考えを実行するしかない。



































クリスマス当日。





家が近いから保乃ちゃんを迎えに行っても
よかったんだけど、あえて駅で待ち合わせにした。









田村「ひぃちゃん早いな、
ごめんね、待たせちゃった?」



森田「全然、今来たところやけん」










保乃ちゃんは真っ白なセーターを着ていて、
これがまぁよく似合ってる。





冬の女神様だな…





いろいろ考えてたけど、
結局町を歩きながらショッピングにした。





途中でお揃いのものが買いたいと駄々をこねたら、
案外すんなりお揃いのキーホルダーを買ってくれた。





保乃ちゃんとデート気分でいると、
時間はあっという間に過ぎる





気付けば日も沈んで
町にはカップルが目立ってきていた。










田村「あー、楽しかったなぁ」



森田「…最後に行きたいところあって」



田村「うん、行こ!」










今日保乃ちゃんを誘った一番の理由。





保乃ちゃんと来るんだって
ずっと前から決めていた場所。





少し歩いた高台からは町の夜景が綺麗に見える。





子供の遊び場だから夜になると人がいなくなって、
静かな穴場スポット。










田村「うわぁー!綺麗!」



森田「気に入ってくれた…?」



田村「うん!すごいなひぃちゃん。
ここ、こんなに綺麗に夜景見られるなんて
初めて知ったわ」



森田「いつか好きな人と見に来るって決めとったけん、
誰も連れてきたことないよ」



田村「そうなん…ん?」



森田「ん?」



田村「い、今の、保乃の聞き間違い?」



森田「聞き間違えとらんと思う」



田村「ひぃちゃん…」










クリスマスの雰囲気を借りて、
今までずっと言えなかったことを
保乃ちゃんに伝える。





幼馴染みの壁を維持できなくなることを
私は言ってしまう。





もう、我慢できなくなっちゃったから。










森田「ずっと、ずっと…
昔から保乃ちゃんのこと好き。
いつからか幼馴染みって思えんくらい
好きになっとった」



田村「そうやったんか…」



森田「今日は保乃ちゃんに
気持ち伝えようって思っただけやけん。
寒くなってきたし帰ろう」



田村「待ってよ!」










保乃ちゃんの怒ったような声にびっくりして
肩に力が入る。





ゆっくり振り返ると、
やっぱり保乃ちゃんの顔は怒っていた。





怒っているというよりも泣きそうっていう方が
近いかもしれん。










森田「ご、ごめん、
そんなに気を悪くするとは思っとらんくて…」



田村「違う!ちゃんと聞いて」



森田「はい…」



田村「もう一回言ってや」



森田「え?」



田村「保乃のこと、ひぃちゃんがどう思ってるんか。
もう一回言って」



森田「え、いや、に、2回言うのは
恥ずかしいんですけども…」



田村「言って」










泣きそうな保乃ちゃんからの圧。





泣かしたいわけじゃなかったのに…





保乃ちゃんからのお願いなら
恥ずかしいけどしょうがない。





保乃ちゃんの目をしっかり見てもう一回口を開く。










森田「ほ、保乃ちゃんのことが好きです、
ずっと前から、好きです」



田村「…それだけ?」



森田「え?さっき言ったのはそれだけ…」



田村「ひぃちゃんの言いたいことは
それだけなんかって聞いてんねん」










…言いたいこと、もっとありますよ。





ありますけども、それを言ったら
保乃ちゃんとの関係性が崩れちゃう。





好きだって言っといて今更だけど、
友達として、ただの幼馴染みとして
横にいられる選択肢を取りたい。





これ以上言ったらそれさえできなくなる。










田村「…ひぃちゃんが言わへんなら保乃が言う」



森田「なに…?」



田村「ひかる」



森田「は、はい」



田村「保乃はひかるが好き。
私と付き合ってくれませんか?」



森田「へ…?」










突然の呼び捨てに戸惑う。





え、というか保乃ちゃん、
私と付き合ってくれませんかって言った?





今度は私が聞き間違えた?










森田「き、聞きま…」



田村「聞き間違いちゃう」



森田「え、だって、保乃ちゃん、え…」



田村「ひぃちゃんが言ってくれへんから
私から言ったんやで」










そう言って俯く保乃ちゃんは顔を真っ赤にしていて。





保乃ちゃんの言葉に嘘がないことを表していた。










森田「保乃ちゃん」



田村「なに?」



森田「付き合いたいです」



田村「…私、今言ったやん」



森田「自分からも言いたいなって。
だから、返事は、私でよければお願いします」



田村「ひぃちゃんがいい」










そう言われたと思えば視界は真っ白になる。





あ、保乃ちゃんに抱き締められとる。





保乃ちゃんの真っ白なセーター、保乃ちゃんの匂い。





そう思って上を見上げると、
保乃ちゃんが今まで見たなかで一番優しい笑顔で
私のことを見とった。










森田「保乃ちゃん…」



田村「やっと付き合えた」



森田「やっと…?」



田村「ひぃちゃん見ててな、
もしかしたら脈ありかもとは思ってたんやけどな」



森田「保乃ちゃんも前から好きでいてくれてたの?」



田村「もうずっとやで。
でも勘違いやったらって思ったら
怖くて言えんかった」



森田「そっか…」










好きなのは自分だけじゃなかった。





それがわかっただけでも十分舞い上がる理由になる。





抱きついたまま保乃ちゃんの手をとり
恋人繋ぎにする。





幼馴染み卒業やな、って笑う保乃ちゃんが
今までで一番かわいくて綺麗だった。





































Fin