小林side










小林「はぁ…」



田村「ゆいぽんさん、どうしたんですか?」



小林「あぁ、保乃ちゃん」



田村「私でよければ聞きますよ?」










そう言って隣に座ってきたのは後輩の田村保乃。





周りをよく見ている子で、とても頼もしい存在。





理佐と一緒にいることも多いし、
聞くと言ってくれたし相談してみるか。










小林「聞いてくれる?」



田村「もちろんです!どうしたんですか?」



小林「実は最近、理佐が構ってくれなくて」



田村「あら」



小林「私、あんまり甘えるタイプではないんだけど」



田村「はい」



小林「私だって、甘えたいときは時々あるわけでさ…」



田村「ゆいぽんさん、意外とそういうの
言えないタイプなんですね」



小林「意外かな?」



田村「はい、好きな人には積極的なタイプなんかなって
勝手に思ってました」



小林「全然…理佐の重荷にはなりたくないからさ、
縛りたくもないし」










構ってくれないとはいっても、
全く話してくれないとかそういうことじゃない。





私の誕生日はしっかりお祝いしてくれたし、
プレゼントもくれた。





十分に好きを伝えてくれているのに、
それなのにもっと構ってほしいなんて思う私は
欲張りなのかもしれない。










田村「じゃあ、保乃からひとつ、手助け案を提案します」



小林「手助け案?」



田村「ひぃちゃんを派遣します」



小林「なんでひかる?」



田村「任しといてください!」



小林「あ、ちょっと保乃ちゃん…」










ウキウキの保乃ちゃんが去ってしまい取り残される。





まぁいいか、保乃ちゃんの手助け案が
何かはわからないけど、
何もアクションしないよりはいい気がするし。





しばらくスマホをいじっていると、
目の前に誰かが立っている気がして目線を上げた。










森田「由依さん」



小林「あ、ひかる、保乃ちゃんどういうつもりなの?」



森田「まぁまぁ、森田はお助けマンなので、
由依さんは流されててください」



小林「えぇ…」



森田「いいですか?
絶対に私のことを受け入れてくださいね?
約束です」



小林「わかった」



森田「では、失礼します」



小林「ん?ちょ、ちょっと…」










ひかるは隣に座ってきたかと思えば腕を絡め出す。





びっくりして離れようとしたけど
『受け入れるって約束しましたよね?』
って半ば脅しの言葉をかけられた。





確かに約束はしたし、
『由依さんのためですから』
なんて言われたら抵抗する理由もないし大人しくする。





ひかるも満足したのか横でスマホを触り出す。





この間動物園行ったんですー、
といろいろ写真を見せてくれる。





動物と自撮りしてたり、本当にかわいいな、ひかるは。





そんなことを思っていると目の前に理佐がいた。










理佐「ひかるちゃん」



森田「はい、あ、理佐さん」



理佐「…ちょっとこば貸して」



森田「由依さんはものじゃないので、
理佐さんといえど貸せません」



理佐「…」










ひかるの屁理屈に理佐がいらっとしたのが伝わってくる。





これ、結構怒ってますけど…





ひかるは全く気にしていない様子で続ける。










森田「今は私が由依さんの隣にいるんで。
理佐さんは後にしてください」



理佐「…こばと2人で話したいんだけど。
大事な話だから早くしたい」



森田「うーん、わかりました」



理佐「…こば、行くよ」



小林「あ、うん」



森田「由依さん、またぎゅーってしましょうね!」



小林「うん、あとでね」










理佐に手首を掴まれたまま連れてこられたのは、
廊下の自販機の影。





周りからは見えにくい位置に来たけどどうするんだろう?





理佐が通路側に立っているから、
私は必然的に壁にもたれかかる形になる。





私に理佐と向き合う以外の選択肢はなくなった。










理佐「由依」



小林「なに?」



理佐「さっきのひかるちゃんとのあれ、なに?」



小林「なにって言われても…」










ひかるが勝手にくっついてきた、
と言いたいところだけど、
たぶんひかるは保乃ちゃんが何か言ったから来ただけ。





じゃあなんで保乃ちゃんがそんなこと言ったかって、
私が相談したからで。





そんなまどろっこしい説明を
理佐は今欲してないだろうし。





なんて答えればいいのかわからなくて、
無言の時間を作ってしまう。





変な間を破ったのは理佐の方だった。










理佐「…由依は私と付き合ってるんだよね?」



小林「そうだよ」



理佐「じゃあ…あんまりくっつかないで」



小林「え?」



理佐「ひかるちゃんにぎゅーするのはいいけど、
あんまりしないで」



小林「え、えっ…?」










予想外の一言に戸惑う。





なにこの展開、保乃ちゃん説明してほしいんだけど。





理佐がこんなに素直に感情をぶつけてくることは珍しい。

 








理佐「由依が他の人とくっついてるの、嫉妬する」



小林「へ…?」



理佐「私の由依なのにって思っちゃうから…
みんなと仲いいのはいいことだし、
後輩からも好かれてるのは
由依が素敵だってことだからさ」



小林「…うん」



理佐「ごめんね、勝手で。
由依もなんかあったら言って?」










理佐が私のことで嫉妬してくれてるなんて、
こんなに嬉しいことはない。





にやけそうになる顔を抑えながら、
自分も言いたいことを言わなくちゃと思う。










小林「私も理佐に直してほしいところがあるんだけど」



理佐「うん、なに?」



小林「もっと…もっと私に構って?」



理佐「か、かまっ…」



小林「誕生日以降さ、
理佐が全然構ってくれないから寂しかった」



理佐「…ごめん」



小林「理佐が忙しいのもわかってるけど…
でもやっぱり寂しか…んっ…」



理佐「…ごめん、これで許して?」










狡い、本当に狡い。





それで許せない、なんて言えると思う?





外でイチャイチャするのを好まない理佐が、
自販機の影でキスしてくるなんて、
そんな展開があるなんて思わないじゃん。





耳まで真っ赤になった理佐がかわいいと思うけど、
きっと私も理佐のことを言えないくらい
真っ赤になってるだろう。










理佐「…そ、そろそろ戻ろうか」



小林「…うん」



理佐「今日…一緒に帰ろうね」



小林「うん…」



理佐「…やっぱり、まだちょっと時間ありそうだから、
抱き締めてもいい?」



小林「あ、うん」










理佐の長い腕に大人しく抱き締められる。





早めの心臓の鼓動が伝わってくる。





ハグも久しぶりな気がして、
自分からも理佐にくっついてしまう。










理佐「…由依のことが好き」



小林「私も理佐が好きだよ」



理佐「だから…他の人のところあんまり行かないで?」



小林「わかってるよ、理佐もね」










ムードもなにもないけど、
私にとっては理佐が構ってくれたことが
何よりも嬉しかった。





ありがとうの気持ちを込めて、
少しだけ抱きつく力を強めた。








































田村「ちゃんと言えました?」



理佐「うん」



田村「ひぃちゃんに負けなかったですか?」



理佐「もちろん」



田村「ゆいぽんさんがかわいすぎて
話かけにいけないなんて、
理佐さん案外ヘタレなんですね」



理佐「うるさい」



田村「ふふ、さすがに焦りました?
ひぃちゃんとゆいぽんさんの距離感」



理佐「当たり前じゃん…」



田村「わざわざ嫉妬させられないと言えないなんて、
ゆいぽんさんが聞いたら呆れられちゃいますね」



理佐「そんなこと言ったって…
ないとは思ってるけど、奥手すぎる私に呆れて、
積極的なひかるちゃんの方に行っちゃったら
とか思ったし…」



田村「あ、ちなみにですけど、
ひぃちゃんはゆいぽんさんのこと、
そういう好きじゃないらしいですよ」



理佐「えっ?!」



田村「ひぃちゃんに演技のお仕事来ないかなぁ~!」



理佐「保乃ちゃーん?」



小林「ん?ひかる演技やるの?」



森田「やれたらいいですねぇ、
由依さんには敵いませんけどもー」





























Fin






















約1か月半遅れになってしまいましたが、
小林由依ちゃん、21歳のお誕生日おめでとうございました!



パフォーマンスではめちゃくちゃかっこいいところも、
オフショットとかで見えるお茶目なところも、
そこさくのイヤホンガンガンゲームで大声になっちゃったり、
粗品のオマージュギャグをやるところも大好きです!



素敵な1年になりますように…!



お読みいただきありがとうございました!