小林side
握手会から2ヶ月くらい経った。
あの日以降、私は分かりやすく渡邉理佐にハマって、雑誌を読んだり、欅坂がテレビに出るのを意識的に見るようになった。
ついにはオダナナに唆されて、次に発売されるシングルで開催される渡邉理佐の個別握手会にまで申し込んでしまった。
オダナナがいろいろ教えてくれたお陰で、渡邉理佐にも欅坂にもかなり詳しくなった。
今は二人でカラオケに行った帰り。
オダナナはバイトがあるからって急いで駅まで走っていったから、私は一人で駅まで向かっていた。
理佐「あ!由依ちゃん!」
小林「?……え、渡邉理佐…さん」
理佐「遠いなぁ、この間話したじゃん」
小林「覚えてるんですか…?結構前だし、あんなにたくさん人いたのに…」
理佐「由依ちゃん、すごくかわいかったから印象に残ってるの」
小林「そう、ですか…」
理佐「ねぇ、ちょっと時間ある?」
小林「あ、はい」
理佐「お茶しない?」
小林「え、いいんですか…?」
理佐「もちろん。じゃあ行こ」
道端で芸能人に会うことが本当にあるだなんて思ってもいなかった。
そして一度握手会に行ったきりなのに、向こうから声をかけられることがあることに驚いている。
でも今、私の前に座ってジャスミンティーを飲んでいるのは、まぎれもなく、欅坂46の渡邉理佐だ。
理佐「この辺はよく来るの?」
小林「たまに、ですかね。遊ぶときはこの辺になることが多いですけど」
理佐「由依ちゃん固いよ(笑)もっと力抜いてー。たぶん歳もそんなに変わらないからさ、いくつ?」
小林「19です」
理佐「一個しか変わらないじゃん、タメでいこうよ」
小林「いや、だって欅坂ですし…」
理佐「欅坂だけど、普通の人間だよ?」
確かに、言われてみればそうだよね。
芸能人だって人間だし、普段の生活はあるわけだし。
かといって、私がすぐタメ口をきけるわけもない。
頭でぐるぐる考えていると視線を感じて、見ると渡邉理佐が真剣な顔をして私を見つめていた。
理佐「私、ずっと由依ちゃんに伝えたかったことがあってさ」
小林「はい…なんでしょう?」
Continue to next time.