バレンタインデー の二人です!















理佐side










3月14日、ホワイトデー。





日本では、バレンタインに彼女からもらった気持ちをお返しする日。





私もそこに該当する一人だから、今日は出来る限り正直に気持ちを伝えたい。





バレンタインデーになる瞬間は、私の帰りが遅かったから一緒に過ごせなかった。





なんとか終わらせて間に合わせたかったけど、このお仕事だから私の気持ちだけじゃどうにもできなくて…





撮影終わりに事務所に寄ると、家でもよく見る鞄がある。





マネージャーさんに聞けば、写真集のプロモーションでインタビューを受けているらしい。





それなら私にとっては好都合。





見慣れた由依の鞄に、こっそりとチョコの入った箱を入れる。





直接渡そうと思ってたけど、こっちの方がサプライズっぽいし、いいかな。





ちょっと寄るだけのつもりだったから、すぐに荷物をまとめて事務所を出ようとした。





するとタイミングよくインタビューを終えたらしい由依が戻ってきた。










小林「あれ?理佐、撮影じゃなかったの?」




理佐「さっき終わって、事務所ちょっと寄っただけだから帰るよ」




小林「え、帰っちゃうの…?」




理佐「買い出しして帰るからさ。由依はゆっくりでいいよ」




小林「買い出しなら私も一緒に…」




理佐「今日は私がやるからいいの。もうちょっとかかるでしょ?」




小林「うん…」




理佐「大事な最初の写真集なんだから、しっかりプロモーション頑張ってね。家でご飯作って待ってるから」




小林「わかった…」




理佐「ほらー、元気だして。今日は唐揚げにするから。好きでしょ?」




小林「待っててくれてもいいのに…




理佐「ん?ごめん聞こえなかった」




小林「なんでもない。唐揚げ楽しみにしてるから失敗しないでね」




理佐「任せといてー」










本当は由依が言った言葉も聞こえていた。





私だって、由依といられる時間をたくさん取りたいとは思っている。





だけど、一緒にいるときにチョコに気付かれたらつまんないから。





帰ってきたとき由依がどんな反応をするか楽しみにしながら、スーパーに向かった。























小林「りさぁー!」




理佐「おかえりー。ただいまくらい言いなよ…って、おっと」










帰ってきたと思ったら、いつもより大きめの声と高めのテンションで呼ばれた自分の名前。





廊下からパタパタと走る音が聞こえてきた。





そして、ただいまの一言もなく、私の胸に飛び込んできた。










理佐「お疲れ様。どうしたの?」




小林「わかってるくせに!」




理佐「…さぁ、なんのことかな」




小林「これ、理佐でしょ?ありがとう、すごく嬉しい」




理佐「ん、どういたしまして。由依と違って、市販ので申し訳ないんだけど…」




小林「全然。気持ちだけでも嬉しいし、これ、私が前に話したやつじゃん。覚えててくれたんでしょ?」




理佐「まぁ…テンション上がってたから印象に残ってた」










とか言いながら、頭の中にはあのときの由依を思い浮かべられるくらい鮮明に覚えている。




偶然現場近くにそのお店があることを知って、絶対買って渡そうと意気込んでいた。










理佐「ご飯は?」




小林「うん、唐揚げ食べる」




理佐「準備するから着替えてきたら?」




小林「そうする」










相当喜んでくれたみたいで、夜ご飯を食べながらもすごくご機嫌だった。




由依が笑顔でいてくれるだけですごく嬉しいから、渡してよかったなと思う。




順番にお風呂に入って、今日は由依の部屋で一緒に寝る。




布団に入ると、珍しく由依の方から手を繋いできた。










理佐「どうした?」




小林「チョコ嬉しかった」




理佐「そんなに言うほど?バレンタインに貰ったから、そのお返しだよ?」




小林「私が欲しがってたやつ買ってきてくれたし、帰っちゃったのが結構寂しかったんだけど、帰りに見つけてすごく嬉しかった」




理佐「直接渡そうかと思ってたけど、せっかくならね。落として上げるってやつ」




小林「相変わらずドS…」




理佐「なに?」




小林「なんでもない」










渡したチョコを喜んでくれるのは嬉しいんだけど、そんなにずっとその話だけだと、なんだかもやもやする。





なんて言うか…私のことに興味ないみたいな感じがして寂しいのかな?










理佐「由依さ、チョコの話ばっかり」




小林「…チョコに嫉妬してるの?」




理佐「うるさい」










たぶん由依の言うことで合ってる。





図星なことを言い当てられてちょっと悔しくて、横にいる由依の唇を奪う。










小林「んっ…、待って明日withの撮影…」




理佐「痕つけないから」




小林「そういうことじゃ…んっ、待って」




理佐「待たない、黙って」










明日があるから少しだけ。





そう言い訳をして、ホワイトデーが終わるまで彼女と甘い時間を過ごした。





このときの私は翌日、『腰痛いの隠すの大変だったんだから!』と怒られ、1週間禁止を言い渡されるなんて知らずに、ただ楽しんでいた。
























Fin