理佐side






楽屋のソファーを一人で広々使っている。



少し離れたところにいる彼女が、スマホを見ているのを確認してLINEを送る。



すぐに気付いたらしく、目が合う。



私が少し微笑むと、ゆっくりこっちに来て隣に座ってくれた。






小林「どうしたの?」


理佐「んー?なんでもないよ」


小林「楽屋にいるときに『隣来て』なんて、珍しいじゃん」


理佐「たまにはいいかなって」






メンバーも私たちが付き合ってることを知ってるから、特に隠す必要はない。



ただお互い恥ずかしさがあって、みんながいる前でイチャイチャすることがない。



だけど、今日はなんとなく由依に隣にいてほしくなった。






小林「眉毛下がってる」


理佐「なんでだろー」


小林「寂しかったんでしょ(笑)」


理佐「…なんで笑うの」


小林「ごめんごめん、かわいいなって」






由依に主導権を握られてるのが悔しい。


余裕で私の寂しさを埋めてくれるのが嬉しいけど、自分に主導権がほしいとも思う。


私は由依のことならなんでもわかる。


そんな余裕、私がすぐ失くさせてあげるよ?






小林「ちょっ、と…理佐」


理佐「ん?」


小林「近い、から…」


理佐「別に変な距離感じゃないよ?みんなも知ってるし。普段より近いなーくらいにしか思わないって」


小林「恥ずかしいから離れて…」


理佐「なんで?私、寂しかったから由依を呼んだのに。そばにいてよ」


小林「なんで急にそんなに素直になるの…」






少し由依に寄って腰に手を回した。



たったそれだけのことで由依は近いと焦り出したわけだ。



ひとつのアクションを起こしたことで流れが私に向いてきた。



ふと横を見ると、腰を抱かれたことで緊張したのか肩の上がった由依がいて、かわいいなと思った。






理佐「由依こっち向いて」


小林「えっ?…んっ……」


理佐「…うん、満足した」


小林「わけわかんない…」


平手「うわー!」


守屋「てっちゃん!しーっ!」


平手「だって今理佐がこばに…んぐっ」


守屋「静かに!」


理佐「平手には刺激が強すぎたかなー」


小林「…」






タイミング良くソファーの前を通った二人に見られていたらしい。


今まで楽屋でくっつくことさえあまりしなかった私たちの突然の行動に、平手はもちろん茜も本当は驚いてるはず。






平手「ぷはっ、あかねん痛いよ。…理佐たち今キスしたよね?」


理佐「した」


平手「え、そんな簡単にするものなの…?」


理佐「簡単じゃないよ。緊張してるけど、好きだなって思うから、頑張ってするの」


平手「へ、へぇ」


守屋「理佐!余計なことてっちゃんに教えないの!」


理佐「大事なことだよ。いつか平手にもそういう日が来るかもしれないし」






完全に何かのスイッチが入った私は、今ならなんでも躊躇うことなく話せそう。



現に、普段なら平手に絶対言わないようなことをベラベラと話している。






平手「キスして満足したって言ってた…」


理佐「まだかなー。大人は、夜はキスじゃ終わらないんだよ?」


平手「ふぇっ」


小林「もう理佐黙って…」


守屋「理佐やめてよ、純粋なてっちゃんがかわいそう」


理佐「平手にいつか、好きな人ができたらまた教えてあげるね」


平手「えっ、えっ…」






困ってキョロキョロしている平手も、本気で平手を心配している茜も、顔を真っ赤にして俯いてる由依も、全部おもしろく見えてしょうがない。



自分には想像以上のSっ気があることを実感する。






守屋「もう…てっちゃん、しばらく理佐に関わっちゃダメだよ。とりあえず今日はダメ」


平手「あ、うん。あかねん…えーっと…」


守屋「向こう行って、全部忘れよ。てっちゃんはなにも見てないことにしよ」


平手「う、ん…じゃあバイバイ…」






平手と茜が離れていくのを見送って、由依の方に向き直す。



まだ真っ赤なままの顔で、私と目が合うと両手で顔を隠してしまった。






小林「てちに変なこと教えないでよ…」


理佐「変なことじゃない、大事なこと」


小林「恥ずかしい…」


理佐「手どけてよ、顔見えない」






ゆっくり手を下ろして顔を見せてくれた由依に、もう一度キスをする。


後ろから平手が息を飲む音と、茜が「てっちゃん見ないの!」って言った声が聞こえた気がする。



たまにはこうやってみんなに見せつけるのもありかもしれない。



だって私の由依だから。






















Fin