理佐side





夜ご飯を食べ終え、二人でのんびりするだけの時間。



突然机の上で震えるスマホ。



私のスマホは手元にある、ということは…






理佐「由依のじゃない?」


小林「私?……あ、マネージャーさんだ。ちょっとごめん」


理佐「うん」






スマホを取ると私から少し離れて会話を始めた。



隣にあった温もりがなくなって少し寂しい。





小林「はい……はい、わかりました。…ふーっ、ごめんね」


理佐「いいよ、明日の仕事の話?」


小林「そう。時間変更の連絡」






私の隣に戻ってきてくれた彼女の手を握る。



『そんなに寂しかった?』って少し笑いながら言われる。



さっきより低くて落ち着いた声。



二人のときに聞ける、私の好きな声。






理佐「由依、なんか喋って」


小林「なに急に」


理佐「いいじゃん、なんでもいいから」


小林「うーん…あ、今月のnon-no見たよ」


理佐「ありがとう、どうだった?」


小林「うん、いつも通りかわいかったし、やっぱり表情とかも上手だなって」


理佐「嬉しい」






褒められることも嬉しいけど、私の目的は由依の声を聞くこと。


電話越しのマネージャーさんと話すときみたいな、よそ行きの声じゃない。



着飾らない普通の声。






理佐「もっと喋って」


小林「どうしたの?さっきから変だよ?」


理佐「いいから、気にしないで」


小林「理佐変なのー」






変でもなんでもいい。



声のトーンだけでも、由依が私に気を遣わないでいてくれることがわかるから。



それを実感するには、由依に話をしてもらうしかない。






小林「んー、そんなにすぐ話すこと思い付かないよ」


理佐「なんで?」


小林「だって毎日一緒にいて、本当に些細なことでも理佐に報告してるもん」


理佐「そっかー」


小林「今日は特に話すほどのことはなかったしなー」


理佐「じゃあ、名前呼んで」


小林「理佐」


理佐「もっと」


小林「本当に変だよ?どうしたの?」


理佐「いいから、お願い」


小林「りさりさりさ」


理佐「ふふっ」


小林「もうなにー?」


理佐「なんでもない、ありがと」






いつも通りの由依の声。



電話のときの少し高い声じゃなくて、いつもの声。



私と話すときに聞ける声。



それだけで特別な存在になれてる気がして、私は嬉しくなるんだ。











 Fin