祖母は新型コロナウイルスが騒がれるほんの少し前に亡くなった。
94歳大往生である。
祖母が住んでいた家は、昨年解体され今はもうない。
オリジナルの祖母の家は、日本昔ばなしに出てくるような茅葺き屋根の、囲炉裏がある中々趣のある家だったらしい。
吹き抜けの家を2階にしたり、増築して住み継がれていった。
2階へ続く階段は足がすくむような急勾配で、登ると秘密基地のような薄暗い部屋は裸電球が一つ、心細く光り、物置となっていた。
窓は障子がはまっており、開けてみるとガラス窓はなく外だった。
障子一枚だけの窓だったから寒いわけである。
不思議なことに部屋と外を仕切るのは障子に、穴は空いていなかった。
すぐ軒下に障子の戸があったからなのか、よく雨風に耐えものだと驚いた。
夏は涼しかったが、冬はやはりそれなりに寒かった。
祖母の家は築150年くらいであると思われるが、窓ガラスがなくとも年数的には長期優良住宅である。
私がまだ幼い頃はお風呂が外にあり、お風呂が済むと、父がお風呂の壁をただいて合図をし、母が迎えにきてくれた。
暮らすのは不便なことも多かったが、庭には小川が流れ、池があり、目の前は山があって自然の中の祖母の家が好きだった。
山からの水は、真夏でも手が凍りつくような冷たさで美味しかった。
その天然水を水道水として使い、天然水で風呂に入り、洗濯もしていた。
今思うとなんとも贅沢である。
庭にあった洗面所の蛇口は常に天然水を出しっぱなしにしており、ジュースや、果物などを冷やしていた。
祖母の家の思い出は、かけがえのない宝物である。