「もう急がなくていいよ
 ゆっくりおいで」

タクシーの中で
携帯が喋った
あの日

察したように
黙りこくったままだった
タクシードライバー

私は独り
暗い後部シートに埋もれ
震えていた

一月の
凍りついた夜

霜を被ったように
くすんで錆びてたネオンライト

間に合わなかった私