HEATH OF 2006 ~僕たちのセント・エルモス・ファィアー #8(1) | I am say'S'

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「香り」をテーマにいろんなエッセイと小説を掲載します

            HEATH OF 2006 #8 C‘S BAR(#1)(1)
                ~spring

 
ウィスキー一杯の味わいは四季を思わせる。
歴史を語る舞台はキラキラ輝く細長いチューリップ型のグラス。
マスターが念入りに磨いているのでわずかの曇りもない。
そのグラスに注ぎ込まれたウィスキーは待ちに待ったこの世界に
生まれてきた赤子のようでもある。

ボトルから出てはじめて空気を吸って少しづつ甘みを帯びていくのは
大人になっていく熱き少女のようでもある。
そして一口、また一口とグラスから飲む側の体に溶け込んでいくと
グラスにはわずかな残り香がただようばかり。でもその最後の香りがまた思い出深い。

この日、「タケとアミと僕」、「僕とチナミとタケ」 
という組み合わせから4人で飲むという初めての夜となった。

「タケさんから聞いてはいたけど、アミちゃんってかわいいね。」
「チナミさんこそとっても素敵。 シゲルさんやタケさんから大事にされてうらやましいなあ。」
「僕はチナミさんのことは1%も大事にしてませ~ん。」とタケ。 
すかさずタケはチナミの肘打ちをくらった。

「痛いなあ。全然女らしくないんだから。シゲルさん、これがチナミさんの正体ですよ。」
「そうかなあ。タケが変なことを言うからチナミが怒っているだけだろ?」
「そうよ、こんな素敵なレディに向かって失礼ったらありゃしない。その点、シゲルさんは紳士よね。」
「チナミさん、シゲルさんのこと気に入っているんですか?」
「それはノーコメントね。私はすでに結婚しているしね・・・。」
(まあいいか・・・)
                             ・・・to be continued