5.バースディ・パーティ(7)
「じゃあ、来週の月曜からつけさせてもらうね。」
「必ずですよ。」
ユリのこの一言が僕に熱い思いを注ぎ込む。
深い意味があったわけではないのだろうけどちょっぴり罪な言葉だ。
会話とプレゼント交換で食事の手が止まってしまったこともあり、
さらに時間が経過した。3人の食事が終ったとき、僕はチラリと時計を見ると、もう11時を回っていた。
「デザートをお願い。遅くなってごめん。」
「いえ、どういたしまして。」とキュイジニエのクミさん。
このお店ではワゴンに並べられたスイーツの中から好きなものを好きなだけ
とってもらって食べることができる。
二人が選んでいる間、僕はそっと会計を済ませた。戻ると
「シゲルさんも選んで。待ちきれないわ。」
アミに催促されて僕はあまり考えずに3品を注文した。
僕とアミのプレートはすぐに目の前に現われたけど、ユリのはまだだ。
不思議そうにしているユリに、そうこうしていると照明が暗くなった。
そう、ユリのプレートにはロウソクに灯りがともっている。
そして、プレートにはチョコレートで
Bon Anniversaire Yuri
と書かれてあった。これも僕が事前にお願いしたストーリーである。
ユリはロウソクの炎をそっと消した。これでフィナーレではない。
最後のプレゼントはラトゥールのセカンドラベルのハーフボトル。
今日の味わいをもう一度家で楽しんでもらいたい。
もちろん2004年のセカンドなので今日の味わいとはかなり開きがあるかもしれないけれど、
今日を思い出すくらいは出来るだろう。
ユリにはもうひとつのバースデープレゼントとして、アミには遅れてのホワイトデーとして。
こうして僕のストーリーは幕を閉じた。
ユリはどれだけ喜んでくれたことだろう。
でも僕は返事が欲しいのではなくただ彼女の喜ぶ顔が見たかっただけなのだ。
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