私がカレを責めるようなことを言ったり、カレの気に触りそうなことを言っても、喧嘩になることはありませんでした。
カレは、普段の精神状態であれば、キツいことを言う人ではありません。



「6月くらいまで、何かやたらとピリピリしていたよね。
多分、追い詰められるような状況にいたんだろうなって今なら分かるけど。」



と聞くと、カレはうなづき、当時の状況を説明してくれました。
そういう話は、その時に聞きたかったです。
状況が分からないまま、いきなり噛み付かれては、たまったものではありません。
LINE等でのやり取りには、どうしても限界があります。
顔を見て話をするというのは、やはりとても大事なことだと思うのです。

今回、カレと会うまで、私はとても不安でした。
今まで通り仲良く話ができるのか、分からなかったからです。
でも、ただ話をするだけではダメなんです。
何せカレは気持ちを言葉で表現することが苦手な人なので。
一緒にいる時のカレの表情や行動を見て、私はやっと安心することができるのです。





3日目、ホテルのチェックアウトを済ませ、スーツケースをロッカーに預けてからカレと落ち合いました。
遊覧船に乗った後、温泉に入りに行こうと計画していたのです。
桟橋に向かう途中も、色んな住宅が目に留まります。
廃墟もあれば、新しいマンションもあり、不思議な風景でした。
いつかこの街に住みたいと思いながら散策すると、普段の旅行とは違うものが目に留まるのですね。



遊覧船に乗ってデッキに上がり、海風に吹かれていると、とても気持ちがよくて心がスッキリします。



「悩みとかが全部ちっぽけなことのように思えてくるよね。」とカレ。





青い海と青い空に囲まれ、好きな人の隣りにいて、私はこの上ない幸福を感じていました。
幸福というのは、こういうところにあるものなのですね。