「至宝 ある巨大企業の犯罪」(2011)

硬派な映画という印象。
老舗の巨大企業が犯罪に手を染めるまでを描くのだが、経済的なことはサッと流される。あまり面白さを感じなかった。
ドキュメンタリーとしてはふわっとしていて、映画としては淡白すぎる。

108分あるが、犯罪行為が行われるのは残り30分の部分。
それまで70分以上は会社がじわじわと崩壊していく様子が描かれる。





↓以下ネタバレ含む感想





そもそもこのレダ社はワンマン社長が役員を家族で固めているという、悪い意味で古の中小企業のような印象。考え方が古く、ズブズブ人間関係で経営しているため、会社内の金銭のガバガバ利用への自浄作用も無い。
それが頑張って倒産しないように経営していくうちに巨大企業になっていくのだが、内部のシステムも方針もアップデートしないために限界を迎える。
ここで不正に走らずに倒産していたなら、似たような会社はたくさん合ったのではないかと思わせる。

ドラマが全然無いぶん、リアルっちゃあリアル。
映画として盛り上げられる部分もあったと思うので、もう少し緩急をつけてほしかったかな。

登場人物がほぼ胸糞悪い人だった。
唯一真人間なマーケティング部長は自殺してしまうし。

社長まじバブちゃん。
自分と同じ考えしか受け入れないというワンマン社長なんだけど、ラストでは自分が不正をバラしたせいで従業員が忙しく隠蔽したり相棒が逃げも隠れもせず堂々と逮捕されたりしているのを尻目に、自分と妻だけロシアの教会にお参りにいくという行動をとる。でもバブちゃんだから納得。すごいキャラ性。

財務部長は差別的でキレ散らかす短気なおじさんという濃いキャラクター。女好き。社長へ不思議なくらいに全幅の信頼を置いている。

それにしても部下の女の子と財務部長が肉体関係になる意味がわからなかった。
良い雰囲気になる展開も、肉体関係になったら女の子にとって得になる要素もない。
しかもその関係はストーリーに何の影響も及ばさない。
視聴者サービスのお色気シーンなんだろうか。

そこに尺を取るなら、不正に気づいてから割とあっさり死んでしまったマーケティング部長についてもう少し描写を割いて欲しかった。

やばい会社に入ってしまったら、死ぬくらいなら会社を辞めるか警察に訴えろ。
そんな学びを得る映画だった。