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2. 音圧反射率】
フルートの内部で発生した音波は、フルートの管壁に何度も反射して共鳴し、音になるわけです。
それではまず、空中を伝わる音波が管の壁にぶつかったときに、いったいどのくらい反射するのかという問題を考えてみましょう。
反射するときの反射率が大きいほど減衰が少なく(つまり長く響く)、反射率が小さいと減衰が大きい(すぐに消える)という違いになって聞こえると考えられます。
音波の反射率は音響工学の基礎の基礎。 教科書の2ページ目くらいに書いてあります。
空気を伝わる音波が固体の壁にぶつかったときの反射率を R (%) とすると、
R(%) = (Z2-Z1)/(Z2+Z1) × 100
Z1: 空気の音響インピーダンス Z2: フルート材料の音響インピーダンス
表 空気を伝播した音波が各材料にぶつかったときの音圧反射率(%)
空気の音響インピーダンス(429)が固体材料(例えば洋銀33,582,000)に比べて約8万分の一とあまりにも小さいので、全ての材料で99.9%以上の反射(ほぼ全反射)になっています。
ちなみに洋銀の音圧反射率が99.9972%。 金では99.9985%。
その差0.0013% (百万分の13)。
ただし、これは音波が管の壁に1回反射したときの反射率ですので、何度も反射すると、例えば洋銀なら
1回目の反射での反射率=99.9972%
2回目=99.9972×99.9972%
3回目=99.9972×99.9972×99.9972%
n回目=99.9972%のn乗
になり、反射を繰り返すほど、音の大きさは小さくなっていきます。
ちなみにフルートの管長を30cmとすると、
音速は320m/secなので、1秒間の間に
320(m)/30(cm)=320/0.3=1066回
1066回の反射が起ることになります。
1066回目に反射した音波の大きさは、元の音波の大きさを1とすると
洋銀:99.9972%の1066乗 = 96.852%
金:99.9985%の1066乗 = 97.891%
音波の空中での伝播減衰など、共通の減衰条件は考えず、材料だけの影響で変化する減衰を計算すると、出音はそれぞれ1秒後には
洋銀: 96.852% (100分の3.15減少)
金: 97.861% (100分の2.14減少)
に減少しています。
この違いを果たして人間が感知可能かという問題は、(その5)以後の海外/国内研究文献の項で検討します。
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