【クルマ画】58・ハーモニーは風に乗って | Gallery"TEKITOH"

【クルマ画】58・ハーモニーは風に乗って

 「音が振動によって伝わる」事を発見したのはエジソンだが
「路面からの入力は音の反響と同じ」としてパフォーマンスダンパーを
実用化したのはヤマハだったっけ。
それを実証する為に、角パイプを音叉状にした物、その音叉状の上辺を
同じ角パイプで繋いだ物、パイプの代わりにダンパーを装着して
減衰できるようにした物…の3種を用意し、それぞれをハンマーで叩き
反響のおさまるサマを実演してみた光景は、正に眼からウロコだった。
平たく「流石は楽器屋」と思ったものだった。

 そういえばトヨタ2000GTが現役レーサーだった頃、キャブセッティングで
ピアノの調律士を呼んで同調を取った…なんて話を聞いた事がある。
限定された考えしか持ってないネットの連中にはわからないだろうけど
異業種で蓄積されたノウハウは、様々な形で転用が効くものだったりする。

 思い出してみるに、俺が昔アシ代わりに乗っていた'87のFZR250
…カウル無しの中古を2万円で譲ってもらった…も、社外マフラーに替えた
だけの代物だったが平気で20000rpm回って、綺麗なソプラノボイスで
歌っていたな。タコメーターのケーブルが断線していたので、音階で
判断するしかなかったのだが。


 今回は、そんな楽器屋さんが造ったスーパーカー。

テキトー画廊-ox

 というワケで今回は1992年 ヤマハOX99-11
発表当時から衝撃を受け、憧れ続けていた幻のスーパーカーだな。
そりゃもぉ当時は驚きましたよ。「うわぁ、斜めから見た顔がZみてぇ」と(笑)。
そう。スポーツカーやレーシングカーが最もカッコよかった'60年代後半の
諸マシンに似た流麗なスタイリングに当時、強い憧れを抱いてしまったのだ。
イヤ今見ても充分カッコいい。正面から見なければ。
 画の方は「ファンタジックな背景」を狙って手ェ入れてみたのだが…
サイケデリックな感じになっちゃったね(笑)。

 発表当時、ジョーダンレーシングのF1に搭載されて気を吐いていた
(実線投入は前年のブラバムから)OX99ユニット…3.5ℓV12で気筒あたり
5バルブという、前年のトヨタ4A-Gにも採用されたヤマハお得意のレイアウト。
これをモノコックタブ後方にリジッドマウントするという「まんまF1」状態。
 このOX99ユニットがまた軽量で、V12の割に140kgに抑えられている。
比較の対象にもならんだろうけど、御馴染み日産L型6気筒(L20A)の
整備重量が170kgだから、その軽さがわかるだろう。
 そのサウンドもV12ならではの、上で綺麗に繋がるカン高いサウンドで
なかなかの美声。

 また関与したスタッフが凄いのだ。
飛行機畑からマクラーレンを経由し、後にナチのコスプレで
猥雑なプレイに興じた変態ジジイと共にマーチ・エンジニアリングを
立ち上げたロビン・ハード、レイトンハウス・レーシングにてF1の開発に
携わったマイク・スミス、そしてレーシングマシンのみならず、ワケの
わからん代物までデザインするムーンクラフト・由良拓也…等々
錚々たるメンバーが名を連ねている。

 特に由良店長が関わっていたのが、日本のガキとしては嬉しいところ。
『空気が見える男』といわれた通り、そのヌラヌラした特異なボディは
ウイング等の空力付加物を必要としない状態で、強力なダウンフォースを
生み出す(Cl値:マイナス0.63はお見事!)上、フロントラジエーター車を
想起させるハナ先のウイング処理等、「趣味と実益を兼ねた」…というか
一連のMCSシリーズで蓄積されたノウハウと趣味性が巧くブレンドされて
おり、今見ても感心する。正面から見なければ。

 そういやハードと由良店長のコラボってのはコレ以前にも
富士GCシリーズであったんだよね。間接的にだけど。

テキトー画廊-xray_draw

 ↑図解。ヤマハの単車図解からの繋がりだろうけど
大内誠氏が作画している。
見てわかる通り、アルミとカーボンとケブラーの集合体である
ボディの方は「まんまF1」な感じ。
 …にしても、アーム類の細長ェこと。段差越えるのに神経使いそう
…などと、スーパーセブン経験者は思ってしまうのだが。

テキトー画廊-cockpit

 ↑コックピット写真。タンデム2シーター車というのが世界的に
例がない…というワケではないが(メッサーシュミットのKRやTG等)
やはり特異なレイアウト。あまり語られていない事だが、実は
ドライバーシートが僅かに右にオフセットされていたりする。
2シーターというより1+1シーターと表現した方がいいかもしれない。

 その後Fポンのエキシビジョン用マシンや、フジテレビのF1中継
20周年を記念して製作されたマシンが登場するので、人によっては
見慣れたレイアウトかもしれないが、まぁ珍品といえば珍品か。
キャノピー周りの処理も「飛行機好き」の描いたデザインと見れば
充分納得できる。
 そういや初期段階では、2リッターユニット・OX66を搭載したモデルで
非常にコンパクトなクルマ(無論5ナンバーサイズ)で、由良店長自身は
そちらの方が好みだった…と以前述懐していたっけ。
 写真で確認したところ、確かにキュートなスタイルで好きだなぁ。
やはり正面から見なければという条件つきで。
何だか日産のザウルスに屋根つけたようにも見えたけど。


 私事で失礼だが当時「'94年発売に向けて云々」とあり
「…で、お値段は?」と記事を追ってみると「予価1億3000万円」。
「ダメだこりゃ。悪いことでもしなけりゃ稼げない額だわ。」と
早々に諦めたりもした。
 結局のところ、バブルが弾けてお蔵入りになってしまったのが
残念というか胸を撫で下ろしたというか。

 で、F1直系でセンターコックピットといえば、イヤでも思い出すのが
同年リリースされたマクラーレンF1の存在。
 タラレバでモノ語るのも何なのだが、もしOX99-11が市販されて
対決する事になったら…メタメタにやられたかもしれないね(笑)。






 …で、正面から見た姿なんですが。
まぁ↓こういう感じです。

テキトー画廊-front

 某展示イベントより。
コレはまだマシな方だが、望遠レンズで捉えてみると
かなりマヌケな表情なんだよねぇ。こんなツラの奴に
抜かれたくないわ(笑)。
ちなみに件のイベントで、由良店長自身も17年ぶりに再会したとか。

 イヤしかし、ナマで見ると何と素敵なクルマであることか。