忌しい記憶 | Gallery"TEKITOH"

忌しい記憶

 呑気にル・マンに関する事でも書こうと思ったが
一昨日の三沢社長急逝に関する事でも。

 「そんな馬鹿な」というのが正直な感想だが
同時に「いつ自分に起こってもおかしくない」
という事にも気付く。

 心ない奴は「たかが絵描きに起こるワケが
ねーだろ」とでも罵るのだろうが、こちらも
(規模は違えど)同じく自転車操業の身。
依頼先との折り合いの悪さ(大抵は向こうが
ナメている事が要因だが)に加え、劣悪な
労働条件…時折、キツいスケジュールの上
報酬未払いでしらばっくれるという、困った
輩も存在する…という悪条件の他、
「仕事そのものに殺される」という危険すら
存在するのだ。

 特に三沢社長の場合、選手やフロントの他
大勢の社員を抱えての運営であった。
冷たい言い回しだが『目玉商品』である自身が
体調の是非に関わらずリングに立たねば
興行が成立しない…という悪条件、
誰が非難できようか。

 自身にも思い当たる、二つの忌まわしい
記憶がある。
 一つは、ガソリンスタンドでバイトしていた頃
お得意様としてよく給油に来ていた建材屋の
社長さん。気さくで、誰からも好かれる人で
あり、決して社員を怒鳴りつけたりしないという
好漢でもあったし、客と店員の垣根を越えて
よくしてくれた人でもあった。
 或る日、納期が迫った工事があり、時間帯も
夕暮れ迫った頃。社員の苦労を慮ってか
その条件下、足場の悪い地面でひとりユンボを
繰っていたところ、バランスを崩して倒れた
その重機の下敷きに遭い、天に召された。
「本来は二人一組で重機を操るべきところを
何故一人で…?」と周囲は訝ったが、その心情は
当時も今もよくわかっているつもりだ。

 もう一つは同じく、リング上で倒れたダチ公。
…もう12年も前になるか…。そいつの場合は
ボクシングの現場だが、試合中に異状は全く
見せず、8ラウンドをフルに闘いきった後
倒れたらしい。
 その報を聞いた翌日、都内の大学病院へと
出向いたが、ICUでの治療の甲斐なく後に
脳死が確認された。
 当時まだゲーム屋で社畜やっていた頃で
コレコレこういった事情で早退したい旨を
一応の上司に告げると、あろう事かその御仁
「俺もよくボクシングの試合とか観に行くけど
普通レフェリーとかが止めるんじゃないの?」
だのと、余計な知識自慢(というより単なる
知ったかぶり)をくれてきた。
あの発言自体、本気で赦し難い発言であるが
それはともかく、この上記二件と同じような
喪失感を味わった事は確か。

 悪いことに書棚を整理していた時、後者の
事件を報じたスポーツ新聞が出てきて
とてもやりきれない気分になった。
もう飲まなきゃやってられない。

 そして今回の件と、俺の記した一連について
「よくあること」だのと知った風な口きく連中、
手前ェら二度とその汚ねぇ口を開くな。
そしてネットに下らん文字列を晒すな。
高見の見物で済ましている手前ェらなんぞに
現場で血ィ吐く程苦労している人々の心情を
勝手に推し量られてたまるか。

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