まさかお笑い芸人のモノマネで再ブレイクすることになるとは、本人も思ってもいなかったに違いない。

 

喜んでいいのか最初は複雑な気持ちだったかもしれない。

 

ケンドーコバヤシが「アメトーーク」をはじめ、いろいろな番組で越中詩郎のモノマネを披露していた。

 

越中がヒップアタックに行くまでが激しい。

 

ケンコバは地団太踏むように何回も飛び跳ね、凄い踊り、凄い踊りを繰り返し、ようやくヒップアタック!

 

さらにパワーボムポーズからパワーボムを炸裂し、フォールする時には真顔で手を上げる。

 

越中を知っている観客は大爆笑。手を叩いて笑い転げている。

 

また、プロレスを知らない人が越中の試合を観て本当にヒップアタックをやっているので衝撃を受けた。

 

ある時、越中にケンコバがモノマネをしている映像を見せると、越中は納得いかない表情で首をかしげ「俺、こんなことしてます?」と聞く。

 

もちろんしていない。かなり脚色している。

 

ところが、このケンコバのモノマネがきっかけで越中が再ブレイクしてしまい、ついに永田裕志とのシングルマッチが実現。

 

最初はノンタイトル戦だったがIWGPヘビー級選手権試合になったのだ。

 

2007年5月2日、後楽園ホールは超満員で入り切れないファンが大勢いた。

 

必勝ハチマキをした和装の越中が入場すると大越中コールが巻き起こる。

 

これほどの大声援は維震軍時代にもなかったのではないかというほどの大歓声だ。

 

48歳のサムライシローは、入場時に思わず感涙してしまった。

 

チャンピオンの永田にはなぜかブーイングが浴びせられる。

 

嵐のような越中コール。異様な空気のなかゴングが鳴った。

 

越中が永田をロープまで押すと顔面に張り手! 永田がローキック連打、ミドルキック連打!

 

永田がロープに飛ぶと越中がカウンターのジャンピングヒップアタック!

 

爆発的な大歓声が起こる。

 

越中が馬場流のアームブリーカーと猪木流のアームブリーカーを繰り返し、腕固め!

 

永田が苦悶の表情。

 

越中が張り手! 永田も張り返す。張り手合戦は永田が張り勝ち越中がダウン。

 

永田が強烈なミドルキック連打! ものすごい音が響く。

 

永田がコーナーに飛ばして顔面にフロントキック! ダウンする越中に永田が「立て!」とキックを見舞う。

 

ブレーンバスターを狙う永田だが、粘った越中が逆にブレーンバスター!

 

越中がジャンピングヒップアタック! バックを取ってジャーマンスープレックス! 

 

さらにパワーボム! コーナーポスト最上段に上がった越中がダイビングヒップアタック!

 

後楽園ホールはわきっ放しだ。越中がロープに飛んでジャンピングヒップアタック!

 

カバーの体勢。カウントツウで永田が返す。

 

越中がロープに飛ぶと永田が延髄斬り! さらにエクスプロイダー!

 

片膝をつく越中に永田が激走してシャイニングウィザード! カバーに入るがカウントツウ。

 

永田がミドルキック、ミドルキック! よけずに受けるサムライシロー。永田がミドルキック!

 

両拳を握り、真っ赤な顔でキック攻撃に耐える越中。

 

長い歴戦で高田伸彦や山崎一夫や橋本真也のキック攻撃を受けてきたのだ。

 

永田がコーナーに飛ばして突進したが、かわしてバックに回った越中がスクールボーイに丸め込むがカウントツウ。

 

越中が首固め! カウントツウ。永田も首固めで返す。カウントツウ。

 

バックを取った越中が回転エビ固めの体勢からジャパニーズレッグロールクラッチ! カウントツウで永田が返す。

 

越中が延髄斬り! パワーボムを狙う越中だが永田がリバーススープレックス!

 

永田がミドルキックを放とうとしたが越中がローキックで脚を払った。

 

高田伸彦との激闘でも見たシーンだ。

 

越中がパワーボムからのエビ固め! カウントツウで永田が返した。

 

越中がブレーンバスターの体勢で持ち上げて、サムライドライバー84! 

 

脳天から落とした。幻の必殺技が炸裂。永田がうつ伏せでダウン。

 

バックを取った越中がフルネルソン。しかし永田がワキ固めからナガタロックⅡを極めた。

 

すぐに永田がナガタロックⅢに移行。苦しい越中。

 

永田がそのまま反転してリバースナガタロックⅢを決めるがカウントツウで越中が返した。

 

永田がシャイニングウィザード! 顔面に入った。

 

越中コールが巻き起こる。

 

永田が垂直落下式ブレーンバスター! カバーの体勢。カウントツウで越中が返す。根性しかない。

 

バックを取った永田がバックドロップ! カバーに入るがカウントワンで越中が返した。

 

永田がミドルキック、エルボー、ボディにニー! バックを取ってバックドロップホールド! カウントスリー!

 

永田が初防衛に成功したが、越中に大拍手が送られる。

 

ものすごく盛り上がった試合だった。

 

2007年といえば「新日本プロレス暗黒期」「失われた10年」などと言われていたが、リング上で行われていた試合は熱かったのだ。

 

2007年6月、ケンコバと越中の共著で『やってやるって!!』という本が発刊された。

 

このサムライシローの再ブレイクは不思議で特殊な現象だった。