2005年大晦日に開催された「PRIDE男祭り-頂-」のメインは、小川直也VS吉田秀彦。

 

小川が入場する時、橋本真也の「爆勝宣言」が流れ、プロレスファンは歓喜乱舞し、泣いているファンもいた。

 

白いハチマキをした小川が堂々と入場する。

 

吉田は柔道着姿で入場。しかし、コールされる時、吉田がPRIDEで初めて柔道着を脱いだ。

 

さすがに小川相手に柔道着で闘うのは危険過ぎる。賢明な判断だ。

 

小川は193センチ、110キロ。吉田は180センチ、107.5キロ。

 

柔道の現役時代はかなりの体重差があったが、この試合ではほぼ同じだ。

 

修羅の道。獣の道。真剣勝負の舞台。予想通り握手の代わりにグローブを合わせることはしない。

 

運命のゴングが鳴った。吉田が一気に打撃で攻める。パンチ、ニー、ヘッドロック。

 

コーナーでもつれる両雄。膠着状態になりブレイク。

 

パンチ合戦。吉田がタックル、ボディにニー! 脚をかけて倒し、吉田が上になった。

 

しかし小川のガードが固い。吉田が脚を取りながら上からパンチ! 

 

吉田が足首を極めた! 小川が必死に防御する。小川が上体を起こし、顔面にパンチ!

 

技が外れて小川が上になる。小川が上から左右のパンチを連打する。

 

吉田も下からパンチ! 小川が上からパンチ連打! 吉田が腕を取ってひっくり返した。

 

吉田が上からパンチを連打し、踏みつける!

 

バックを取った吉田がスリーパーを狙う。防御する小川。

 

吉田が側頭部にパンチを連打する。小川が苦悶の表情。効いている。

 

今度は小川が上になり、パンチ連打! 吉田が下からキック!

 

小川が側頭部に強烈なパンチ! 効いているか、小川が上からパンチ連打!

 

吉田が三角絞めのような体勢で腕を取った。小川の肘が伸びる。

 

粘る小川だが、吉田の腕十字固めが完璧に極まってしまった! 小川の肘が完全に伸びている。

 

小川はタップしない。レフェリーが止めた!

 

濃密な6分4秒。吉田が勝った。

 

小川が寝た状態のまま、吉田を称える仕草。吉田の顔が腫れている。やはり相当パンチが入っていたのだ。

 

マイクを持った小川が、言い訳ではないが、脚が折れていたことを明かした。

 

吉田が足首を極めた時、骨折してしまったようだ。

 

折れた瞬間、小川は顔に出さなかったからダメージがわからなかったが、ボキボキという音を聞いたファンが何人もいた。

 

言われてみれば、吉田が足首を極めたあと、一度もスダンディングポジションで闘う場面はなかった。

 

小川は歩ける状態ではなかったが、ずっと激痛を堪えながらグラウンドの攻防をしていたのか。

 

ものすごい根性、精神力だ。

 

セコンドの肩を借りながら、小川は吉田に頼む。一緒にハッスルをやってくれと。

 

大歓声がわいたが、吉田は拒否した。

 

吉田ファンからすれば、拒否するのは当然だ。

 

勝っても負けてもハッスルポーズをする小川を、吉田は「道化をやるならPRIDEのリングに上がらないでほしい」と批判していた。

 

だから吉田がハッスルポーズをやることは1000%絶対にない。

 

吉田がもしも空気に飲まれて、笑顔でハッスル、ハッスルなんてやったら、ファンは離れていくだろう。

 

再三、小川は吉田に「一緒にやってくれよ」と頼んだが、吉田は拒否した。

 

小川は仕方なくセコンドに肩を借りながらリング中央でハッスルポーズ。

 

その時、吉田はコーナーで背を向けていた。

 

 

翌日からあちこちのプロレスブログで、吉田に対しての猛批判が起こった。

 

よほど小川が負けたのが悔しかったのだろう。ハッスルを一緒にやらない吉田を「大人げない」と批判していた。

 

私は反論した。ヒョードルも小川のハッスルポーズを批判していた。

 

総合格闘技で敗れた選手は、死ぬほど悔しい精神状態になっているが、あのポーズは追い討ちをかける。

 

「ハッスル」というイベントを知らない選手にしてみれば、追い討ちでしかない。

 

負けてもハッスルは余計に理解できないというのが、ほかの選手の本音ではないだろうか。

 

ブログが流行り出す前は、プロレス専門誌の読者投稿くらいしか、ファンの気持ちを知る場はなかった。

 

しかし、2005年にブログが流行り出し、多くのファンの本音を知った。

 

そして私は、自分が、プロレスファンと相当意見が異なることを知り、急速にプロレスに対して冷めていった時期でもある。

 

昭和の時代の熱い思いは、平成になって消えていったかもしれない。

 

私の感覚では、正々堂々と闘った吉田を批判する気持ちはゼロ%だったので、悲しかった思い出である。