2005年大晦日に開催された「PRIDE男祭り-頂-」

 

PRIDEヘビー級チャンピオンのエメリヤーエンコ・ヒョードルは無敗の快進撃を続けていた。

 

8月28日には、ついにミルコ・クロコップと夢の対決が実現したが、3R3-0でヒョードルの判定勝ち。

 

まさかミルコに対して打撃で勝負を挑んで来るとは、ヒョードルの戦法にミルコは驚いていた。

 

ヒョードル、ノゲイラ、ミルコがPRIDEのビッグスリーと呼ばれているが、ヒョードルがやはり最強だ。

 

2005年大晦日、そのヒョードルに挑戦するのは、哀しみの肉弾魔人ズールだ。

 

ズールは200センチ、185キロの巨漢。公式記録ではないが、36戦無敗と言う。

 

ヒョードルは182センチ、105キロ。

 

15キロの体重差がある場合、4点ポジションでの膝蹴りが反則になるが、ヒョードルがそのルールは必要ないと認めた。

 

いよいよ緊張のゴング! 慎重に構えるヒョードル。いきなりズールの顔面にガツンと重い左フックが炸裂し、2メートルの巨木が倒れた。

 

ヒョードルが猛然と襲いかかり、殴る蹴る! 必死に起き上がったズールだが、ヒョードルが思い切り左フック!

 

ダウンしたズールに、ヒョードルが何発も何発もハンマーパンチ連打! ズールがたまらずタップアウト!

 

衝撃の26秒殺! 放送席は唖然。高田延彦も「強い!」と絶句している。

 

ズールは立ち上がれない。ヒョードルはホッとしたような笑顔。初対決だけに、決して油断していなかった。

 

さいたまスーパーアリーナはほぼ総立ちだ。この日一番の盛り上がり。

 

 

PRIDE男祭り-頂-は、ほかにもドリームカードが組まれていた。

 

桜井マッハ隼人VS五味隆典は、1R3分56秒、五味のKO勝ち。

 

五味がライト級トーナメントで優勝を果たした。

 

 

マーク・ハントVSミルコ・クロコップの試合は、マーク・ハントが2-1の判定勝利。

 

 

ミドル級タイトルマッチ、ヴァンダレイ・シウバVSヒカルド・アローナは、2-1でシウバの判定勝ち。シウバは4度目の防衛に成功した。

 

 

桜庭和志VS美濃輪育久のプロレスラー対決は、1R終了間際、桜庭がアームロックを極めた。美濃輪は最後までギブアップせず、9分39秒、レフェリーストップで桜庭が勝った。

 

 

そしてメインは、小川直也VS吉田秀彦の柔道対決があり、特にプロレスファンが注目していた。

 

2005年はブログが流行り始めた頃だけに、ファン同士の論争もオーバーヒートしていた。

 

プロレスファンは「小川が勝つに決まっている」と言い、PRIDEファンは「は? 小川に勝てるわけないじゃん」と反論。

 

私はプロレスもPRIDEも両方大好きなファンだったので、プロレスオンリーのファンとは意見が合わなかった。

 

メインの試合は「非国民」と言われようと、私は吉田秀彦を応援していた。

 

小川と吉田は、共に1992年バルセロナ五輪に出場した柔道の猛者だ。

 

吉田は78キロ級で金メダルを獲得したが、小川は95キロ超級で惜しくも銀メダル。

 

しかし小川は世界選手権で4個の金メダルを獲得する文字通り日本最強の柔道家だった。

 

さいたまスーパーアリーナには、多くの柔道家がリングサイドで観戦していた。

 

吉田は、プロレスのリングに立つ小川を見て「どうしちゃったの小川先輩?」と、その別人ぶりに驚いていた。

 

五輪に出場した頃の小川直也とは、体形も性格も別キャラに変身していた。