2005年1.4東京ドームで行われたアルティメットロワイヤル。
リングに8人の選手が上がった。
皆オープンフィンガーグローブをはめている。
出場選手は、永田裕志、中西学、矢野通、成瀬昌由、長井満也、ドルゴルスレン・スミヤバザル、ブルー・ウルフ、ロン・ウォーターマン。
この8選手によるトーナメントだが、ひと組ずつではなく、なぜか成瀬VSウォーターマン、中西VS矢野の試合を同時に行う。
観客はどっちを観ていいのかわからない。
ひと組ずつではダメなのか?
試合は、成瀬が下から三角絞めを狙ったが、ウォーターマンが技をかけられながらも高々と持ち上げての強烈なパワーボム!
マットに叩きつけられた成瀬は半失神なのか動きがない。この状態でウォーターマンが顔面パンチ連打を浴びせると危険と見てレフェリーがすぐに止めた。
ウォーターマンのTKO勝利だ。
中西は矢野にアームロックを極め、矢野がたまらずタップアウト。
ウォーターマンと中西が準決勝に進出した。
スミヤバザルは長井を肩固めで破り、永田はブルー・ウルフに膝十字固めを極めて快勝。
そのまま休まずに準決勝となり、永田はスミヤバザルと、ウォーターマンは中西と同じリングで同時に闘う。
1対1でひと組ずつ観たかったカードだが、ふた組が同時に闘うのでリングが狭く感じる。
永田の顔面ニーでスミヤバザルがガクッと落ちた。そこを永田が顔面パンチ連打! レフェリーが止めたが、納得いかないスミヤバザルが永田にタックルして試合をやめない。
大勢でスミヤバザルを止めてリングから下ろした。
ウォーターマンはフロントネックロックで中西を仕留めた。
いよいよ決勝。永田VSウォーターマン。
ウォーターマンはUFCやPRIDEで闘ってきた総合格闘技の歴戦の雄。出場選手の中で一番このルールには慣れている。
永田はウォーターマンにアームロックを極められ、叫びながらタップ!
ウォーターマンが堂々の優勝だ。
アルティメットロワイヤルの発案はアントニオ猪木で「総合格闘技のバトルロイヤル」「世界で最も危険なルール」ということだった。
ということは、本当に総合格闘技ルールでバトルロイヤルをやるのが当初の計画だったのではないだろうか。
それなら確かに最も危険なルールといえる。
しかし、それはあまりにも危険ということで、トーナメントになってしまったのか。
ならばひと組ずつ試合を見せたほうが良かったと思うが、バトルロイヤルにこだわったのか、ふた組ずつ同時となってしまったのか。
出場選手は、アマレス出身やリングス出身の選手で、こういう闘い方は苦手ではないはずだが、PRIDEでケビン・ランデルマンなどトップクラスと闘っているウォーターマンが断然有利なのは否めない。
このアルティメットロワイヤルを観たPRIDEのトップファイターから「クオリティが低い」と言われてしまった。
この試合は失敗だったのか、成功だったのか。
「面白かった」「刺激はあった」という声もあるが、新日本プロレスの暗黒期を象徴する試合という意見も多い。
危険承知でバトルロイヤルルールにするか、あるいはバトルロイヤルにこだわらずに1対1をひと組ずつ見せるか。
そのほうがまだ良かった気もするが、一番「二度とやりたくない」と発言しているのは出場したレスラーたちだった。
アルティメットロワイヤルに限らず、どこかに「普通のプロレスの試合を見せてもお客さんは満足しない」という誤解があるように感じる。
それは大きな間違いで、大半のファンは、プロレスの白熱した激闘を観に来ているのではないか。
総合格闘技と比較して、プロレス関係者がプロレスに自信を持っていなかったとしたら、どんな戦略を練っても失敗するだろう。
2000年代、プロレスリング・ノアは「プロレスと総合格闘技は野球とサッカーほど違う別物」と断言し、とことん純プロレスを見せてファンに高い支持を得ていた。
ノアが一つの成功例ともいえる。
薔薇の木には薔薇の花を咲かせればいい。