2004年10月9日、両国国技館のメインはIWGPヘビー級選手権試合。
王者・藤田和之に挑戦するのは佐々木健介。
背水の陣の健介をリングサイドで北斗晶が見守っていた。
序盤はグラウンドの展開か。
藤田が胴絞めスリーパーで攻めると健介がブリッジして藤田の両肩がマットにつく。
レフェリーがカウントを数える。「ワン、ツウ・・・」
「危ねえ!」とばかり藤田が慌てて跳ね返し、スリーカウントは入らなかった。
これが伏線のつもりか?
もう一度藤田が胴絞めスリーパーで攻める。同じように健介がブリッジして藤田の両肩をマットにつける。
今度は「ワン、ツウ、スリー」とまさかのスリーカウントが入ってしまった。
藤田が返すそぶりも見せていなかったので、カウントに気づいていなかった?
誰がそんな嘘を信じるのか!
PRIDEを主戦場とする藤田は、スリーカウントルールを忘れていた?
誰も信じない。
ボブ・サップならまだしも、藤田は新日本プロレスで生まれ育った正真正銘のプロレスラーだ。
フォールのルールをうっかり忘れることなど100%あり得ない。
観客は大激怒し、リングに物が投げ込まれた。
平成になって初めて暴動寸前まで行った。
昭和なら史上最大の暴動事件になったかもしれない。
高い入場料を払って来場したファンの怒りは想像を絶する。
僅か2分29秒。裁定は覆られない。健介が勝利し、王座移動。
IWGP王者になった健介だが、強豪・藤田を撃破したという印象がゼロなだけに、喜べない。
ファンの激怒の心を代弁し、独り暴動を起こしたのは北斗晶だった。
草間社長が座っているイスを思い切り蹴飛ばし「フリーだからって舐めんじゃねえ!」と怒鳴りまくった。
新日本プロレスの暗黒期を象徴する大事件だ。
プロレスが衰退したのはPRIDEが原因ではない。プロレス自体の問題だ。
それを物語る茶番劇をやってしまった。
誰も反対しなかったのか?
「こんなことをしたらプロレスは終わる」と意見するスタッフはいなかったのだろうか。
ただでさえ、力道山の時代から、プロレスは最初から勝敗が決まっている八百長と批判されてきたのに、自ら「はい、そうです」と証明するような試合をするのは、私には全く理解できなかった。