1990年6月12日、福岡国際センターのリング上は、いつもと違う緊張感が漂っていた。

 

誠心会館の館長・青柳政司が新日本プロレスに殴り込み。プロレス対空手の異種格闘技戦だ。

 

迎え撃つのはIWGPジュニアヘビー級チャンピオンの獣神サンダーライガー。

 

空手着の青柳は素手で素足だから拳や蹴りが顔面に当たると危険だ。

 

1R3分で無制限ラウンド。引き分けなしの完全決着戦。関節技も投げ技もOKの何でもありルールだ。

 

ただ、青柳は少年時代からプロレスの大ファンでレスラーになる夢を抱いていた男。

 

だからプロレスをバカにしている空手家とは違う。プロレス技も研究してきた。青柳のセコンドには剛竜馬がついている。

 

 

1R、ライガーが高速タックルで青柳を倒し、上になる。青柳の腕を取って腕十字固め! まさか秒殺か。青柳の脚がロープにかかる。

 

青柳がキックを放つがライガーが脚を取ってアキレス腱固め! しかし青柳の蹴りが顔面に入り、ライガーが手を放す。

 

青柳が何とレッグロック。不完全でブレイク。

 

ライガーがバックドロップを狙うが青柳がヘッドロックして腰を落とし防御。相当練習してきている。

 

ライガーが三角絞め! 決まったか。ところが青柳がライガーの脚をどけて切り返し、何と片逆エビ固め。1R終了のゴング。

 

 

ライガーのセコンドには木村健吾や越中詩郎がついている。

 

2R、ライガーの浴びせ蹴りは青柳がよける。青柳が蹴りを放つとライガーがタックルして倒し、上になる。ロープブレイク。

 

離れ際。ライガーがプロレスのノリで反則のストンピング、張り手、キック!

 

青柳が怒った。そっちがルールを無視するならこっちもとばかり、猛然と殴りかかる。喧嘩だ。

 

青柳が上になり、ライガーの顔面にパンチを連打し、覆面を剥ぐ。タイガー服部が止めるがマスクがほぼ全部破けてしまった。

 

ライガーがマスクを気にして立ち上がると、青柳がハイキック、ハイキック、後頭部に後ろまわし蹴り! ライガーがダウン。

 

青柳がストンピング、キック、あびせ蹴り! ライガー苦しい。

 

青柳の後ろまわし蹴りは不発。ライガーが倒して上になるがロープブレイク。ライガーがアキレス腱固め! しかし2R終了のゴング。

 

 

荒れた試合になってしまった。ライガーの素顔がわかるほどマスクが破けている。

 

3R、ライガーがマスクをかなぐり捨てた! どよめきが起こる。山田恵一がキレたか。もう喧嘩だ。

 

ライガーが上になるとチョーク攻撃! 服部が止める。会場から「殺せ!」の声。危険な闘いになった。

 

ライガーが上から顔面にパンチ、パンチ、パンチ! 青柳が流血。割れた額にライガーが鋭角エルボー!

 

わざと肘を鋭角的にして切れるようにエルボー連打! 青柳が大流血。シュートか。白い空手着が赤く染まる。

 

ライガーのコスチュームも返り血を浴びている。

 

青柳が蹴りに来るところを脚を取って倒し、ライガーが胴絞めスリーパー! 青柳が苦悶の表情。3R終了のゴングに救われた。

 

 

4R、ライガーが青柳の顔面に掌底、掌底、掌底、掌底掌底掌底掌底掌底!

 

倒れた青柳にライガーがパンチ、鋭角エルボー! 再び胴絞めスリーパー!

 

「落とせコール」が起こるが、根性の青柳がロープに脚をかける。顔面は血で真っ赤だが闘志剥き出しの青柳。さすが闘技者だ。

 

服部がリングドクターを呼ぶが青柳が嫌がる。絶対にドクターストップなど認めないとばかり、おとなしくドクターチェックを受けない。

 

ライガーがバックドロップを狙うが青柳が粘る。ライガーが上になり、頭部に膝蹴り! 割れた傷口にライガーが膝、膝、膝、膝膝膝膝膝! 後頭部にキック!

 

まだ諦めない青柳。ライガーがタックルで倒し、上になると頭部に鋭角エルボー、鋭角エルボー、鋭角エルボー! 服部がゴングを鳴らした。

 

レフェリーストップだ。壮絶な喧嘩マッチはライガーが激勝!

 

しかし、青柳VS新日本プロレスの闘いはまだまだ続くことになる。