忘れもしない1978年10月19日。全日本プロレスで恐怖のシングルマッチが行われた。

 

大木金太郎対Bブラジルだ。

 

この二人は日本プロレス時代も「頭突き世界一決定戦」と銘打ち、対戦したこともあり、タッグマッチでも何度か頭突き合戦で会場を湧かせた。

 

私がテレビで観戦したのは、78年のシングルマッチだ。

 

最初から最後までヘッドバット合戦は見応え十分だ。両雄とも一歩も引かない。

 

頭突きは流れを変えるための一発に使用されることが多いが、大木金太郎とBブラジルは、ヘッドバット一発でフォールを奪える頭突きの名手だ。

 

「プロレスで頭突き最強は?」という問いに、必ずこの二人の名前が挙がる。

 

大木金太郎とBブラジルは場外へ下りてもヘッドバット合戦を繰り返し、ジョー樋口レフェリーが必死にリングに戻れと注意するが、頭突き合戦は終わらない。

 

ついにカウントを数え始め、両者リングアウト。それでも頭突き合戦をやめないのでジョー樋口が両者を分けようとすると、大木金太郎とBブラジルはジョー樋口にまさかのWヘッドバット!

 

気の毒過ぎる。ジョー樋口が卒倒して失神したことは言うまでもない。何も考えていない。

 

やはり頭突き世界一は、大木金太郎とBブラジルだろう。

 

 

この二人以外でヘッドバットが得意なレスラーは、アンドレ・ザ・ジャイアントだ。あの大きい頭で2階からのヘッドバットは強烈。

 

谷津嘉章とライガーが実際に食らって凄く痛かったと証言しているのが、藤原喜明だ。大木金太郎と同じで一本足打法は痛烈。

 

アブドーラ・ザ・ブッチャーもロープに乗ってのヘッドバットは一発でフォールを奪えるほどの威力がある。

 

アントニオ猪木も頭突きが秘密兵器だ。日頃は出さないがいざという時に炸裂させる。

 

頭突きが得意といえば、やはり天山広吉だ。実況アナが「ダイヤモンドよりも固い天山のヘッドバット!」と叫ぶが、そんなわけない。

 

 

格闘技で頭突きを技として認めているのはプロレスだけで、ほとんどの格闘技では、頭突きは禁止されている。それだけ危険だからだろう。

 

令和の時代、プロレスの試合は器用になったかもしれない。昭和に比べて空中殺法は確実に進化したし、オスプレイの試合なんか、どっちが技を掛けているかわからない時があるほどだ。

 

しかし、だからこそ、頭突き合戦というシンプルで闘争本能そのままの闘い方が、逆に新鮮に映るということもある。

 

ファンは決して、スマートで綺麗な試合を望んでいるわけではない。

 

闘争本能をかき立てるような、刺激的でエキサイトできる試合を観たい。