週刊プロレスの「月刊・龍魂時評」を読んだ。一時代を築いた超一流のプロレスラーである天龍源一郎さんのコラムとなれば、やはり興味を持って耳を傾けてしまう。
NOAHファンから「なぜ58歳の武藤敬司が潮崎豪の挑戦者なんだ?」という声が挙がっていることを、このコラムで知った。
天龍さんは、11年ぶりの日本武道館ということで、一般の客層にも響くビッグネームを用意したことに賛成のようだ。
賛否両論あるが、確かに話題性は大事である。
プロレスは興行会社だ。しかも会社のスタッフだけではなく、レスラー自身が行動して集客に尽力しなくてはいけないのは、昭和の時代から続いている。
他競技のように、選手は試合だけに専念し、練習に没頭し、周りが全部お膳立てしてくれて、当日、リングに向かって華々しく入場する。
これが理想的である。
しかし、プロレスは残念ながら違う。あの猪木さんでさえ、新日本プロレス旗揚げ当初は、自らチケットを売り歩いた。
天龍さんはハッキリ「低迷」という言葉を使った。現実を直視することは大事で、80年代のプロレス黄金期と比較すれば、新日本プロレスも含めて、プロレス界全体が低迷したことは事実だ。
だからこそ、黄金時代にトップレスラーとしてファイトしていた天龍さんの言葉には重みがある。再びマイナーからメジャーになるためのヒントがあるかもしれない。
おそらく潮崎豪が勝つだろうという試合だが、武藤敬司も勝算がなければ挑戦しない。
天龍さんは、武藤敬司が勝つ可能性もある、と言いながらも、潮崎豪は勝つのはもちろん、内容でも年間ベストバウトを獲得するくらいの試合をしないといけないと、ハードルを上げる。
天龍さんは今の全日本プロレスについても、1ページを割いて語っている。
全日本プロレスのOBだけに、全日本プロレスには厳しい。しかし、批判するばかりではなく、刷新のヒントも語っている。
今の時代に王道プロレスを復活させることは難しいかもしれない。
今の新日本プロレスも「過激なプロレス」「ストロングスタイル」を売りにはしていない。
新時代に相応しいプロレスを魅せることは当然大切なことだが、組織には可変部分と不変部分がある。
新しい時代に合わせて柔軟に変えたほうがいい「可変部分」と、どんな時代になっても絶対に変えてはいけない「不変部分」がある。
この「可変」と「不変」を間違えると、ファンは離れていってしまう。
ともあれ、2月12日の日本武道館。潮崎豪VS武藤敬司の試合は気になる。
天龍さんの言うように、ファンを振り向かせるカードを組むことは、大事なことかもしれない。