1983年9月16日、埼玉でアントニオ猪木VSアニマル浜口という貴重なシングルマッチが実現した。

 

プロレスは格闘技である以上、もちろん試合に勝つことが一番大事なこと。それが大前提だが、猪木のようなトップレスラーはメインであろうとセミファイナルであろうと、内容も求められる。

 

相手がどんなタイプであれ試合を面白くするのも超一流のプロレスラーの条件といえる。

 

この当時は軍団抗争の真っ最中だっただけに、試合前からヒートアップ。

 

リング上ではアントニオ猪木とアニマル浜口が臨戦態勢に入っているが、長州力とキラー・カーンもリングにいて猪木と口論している。

 

猪木は三本指を立てて、3人で来るかと挑発し、長州力が怒ってTシャツを脱ぐ。

 

ミスター高橋レフェリーが長州とカーンに下がれと命じるが、エプロンにいる坂口征二を指差し、長州は怒りの形相で怒鳴る。

 

エプロンにいる長州力に殴りかかろうとする猪木だが、アニマル浜口がバックを取ってバックドロップ。

 

浜口はエルボーバット2連発から猪木を持ち上げてブロックバスター。コーナーポスト最上段からのエルボードロップといきなり畳みかける。

 

冷静な猪木はレッグロック。バックを取り浜口の顔を決める。浜口も猪木の脚を取るが猪木が腕十字で返す。

 

猪木の鋭い眼光。引き締まった肉体。隙のない構え。やはりアントニオ猪木はカッコイイ。

 

今度は猪木が河津掛けから河津落とし。これは珍しい。ジャイアント馬場の技だ。そしてすぐさま腕十字。

 

強引に技を外した浜口が反撃する。エルボードロップからサソリ固め。猪木はロープブレイクから場外にエスケープ。

 

いよいよ猪木が来る。浜口の顔面に張り手の連打! ロープに飛ばしてショルダースルー。

 

浜口が立ち上がったところを延髄斬り!

 

猪木がバックを取ってバックドロップかと思ったら、まさかのジャーマンスープレックスホールドでカウントスリー!

 

すぐに長州力とキラー・カーンがリングに上がり猪木に襲いかかるが、坂口征二が飛んで来た。

 

猪木と長州がやり合う。猪木が長州に怒りの鉄拳!

 

さらに小林邦昭、寺西勇、藤波辰爾、ラッシャー木村、前田日明がリングの上で下で大乱闘。

 

前田日明がアニマル浜口をロープに飛ばしてフライニングニールキック! キラー・カーンにミドルキックからのハイキックと大暴れ。

 

場外では長州力とラッシャー木村がやり合う。

 

アントニオ猪木とアニマル浜口の試合だけでも盛り上がったが、3軍入り乱れの大乱闘というプラスアルファの番外編で、ファンも満足だ。

 

特に会場に足を運ぶファンは、せっかく生で観戦しに来たのだから、何かが起こることを期待している場合がある。

 

私も後楽園ホールに行った時、事件に遭遇したことがある。

 

休憩時間に売店に寄ると、怒鳴り合う声が聞こえた。

 

エレベーターの近くで新日本プロレスの若手とスーツを着た大柄の男3人がもめている。

 

ヤバイ。もしかして万が一、あっち方面の人が乱入したかと焦った。一番大柄の男はパンチパーマで893に見えた。

 

しかしよく見ると、ラッシャー木村とアニマル浜口と寺西勇だった。

 

国際プロレス軍団が新日本プロレスに乱入するという事件に遭遇して、ラッキーだと感じた。

 

その後、アニマル浜口はラッシャー木村と仲間割れして長州力と組んだ。

 

会場に来てくれた人たちに「来て得した」「また来たい」と思わせるのも勝負だ。

 

ただし、普通のレスラーが乱入しようが乱闘しようが事件にもサプライズにもならない。

 

こればかりは登場してファンから「嘘だろ!」と驚かれるほどのプロレスラーになるしかない。

 

スタン・ハンセンが全日本プロレスに乱入した時。ブルーザー・ブロディが新日本プロレスに登場した時。大騒ぎになった。