あたいは
「捨てる」ってことに
ためらいがない方の人で。
もともとそうだから
わりと断捨離も得意な方で。








でも、
「すがっていた」部分があった
昔、接客してた頃
理想のお客様に
結婚することを告げたとき
プレゼントしてくれた
ミルクボールがあった
なんか、シリアルとか食べるときに
使えそうなボールね







そのお客様は
当時40代半ばの
それはそれはステキな方だった
若くして、お医者様とお見合いされて
結婚して
息子がひとり いて
息子さんの彼女の話など
楽しく話してくれた
実家が京都だということも
オシャレ感を増しているように
勝手に思っていた







いつもオシャレで
スタイルも良くて
ジーンズがとっても似合っていた
安上がりだからと
自分で染めた髪の毛を
嬉しそうに見せてくれたり
新しく買ったサイフは
1000円で買ったのって
言うけど可愛くて
それはそれは
あたいの
理想の奥様だった








その方がくれた
ミルクボール
高級感あるものではなく
牛のイラストが
どことなくシュールで
あたい好みだった








理想の人がプレゼントしてくれたものは
使っている、
持っている、
その事実が
その人に近づけている、
そんな気がして
使うことが、
持っていることが、
嬉しかった









お店に缶詰で働いていて
そこに来ていたお客様は
お金持ちマダムが多くて
羨ましい…って思ってて 
そのお客様は
マダム感はあんまりなかったけど
いつもランチしてきた、とか
新幹線であそこまで行ってて…
とかオシャレな毎日を過ごして
おられるようだった







よく使っていた
子供の丼もの用にちょうどよくて
シリアルボールとしても使っていた
 







これ使ってたら
あの人みたいになれるかも
これ使ってたら
ジーンズがキレイにはけるのかも
これ使ってたら
もしかしたら
実家京都になるかも
とか
勝手な妄想は
バカな妄想に変換されていた








しかし実は4つセットのミルクボール
どっしり重く
よくよく使ってみると
意外に使い勝手が悪かった









でも手放すなんて。
せっかくあの方が
プレゼントしてくれたのに
あたいの理想の大好きな方が
プレゼントしてくれたのに
捨てるなんて出来ない
手放したら
何か自分の中の別のものも
手放すような気がした















すがっていたんだね、









もらったから
捨てちゃいけない
あの人からもらったから
捨てちゃいけない












使ってるからその人に
近づける
そう思ってたなぁ
そう信じてたなぁ


















どんなに使っても
















あたいは
あたいでした
















この間さ
コップ洗ってて
そのコップを割ってしまった
コップはミルクボールに
当たって
ミルクボールの一部も欠けた
コップは使用不能だが
ミルクボールは欠けただけだから、
使えるか、と思って
ハッとした





















あたいは
あたいだ

















このミルクボール
使っても
使わなくても












自分は自分だ


















新聞紙に
くるんで、
4つ全てを
捨てた















今まで
ありがとう














これでいいのだ
バカボンのパパなのだ