ごきげんよう!さわこです

我が家の雑種の雌犬、14年前の秋、夫がもらってきた。
両手にすっぽり収まるくらいの小ささ、薄茶色に鼻の周りが黒くて、耳が垂れている。
田舎の工事現場のおじさん達に可愛がられていた犬の親子だった。
子犬は知人の家に次々に引き取られて行った。
その一匹が我が家にもやってきた。
夫が「おじゃる」と名付けた。アニメのおじゃる丸が好きだったからだ。
女の子だから「おじゃる姫」だ。

そのころ、我が家は親戚からもらった、雑種の雌の黒犬を飼っていた。
名前はノアクロウ。夫はクロウ、娘はノア。
ふたりが譲らない。そこで二つの名前を続けてノアクロウと名付けた。
怖がりの犬だったが、とても賢くて穏やかだったから、
「ノアクロウに育てさせたら、きっといい子になるぞ」と言って夫がもらってきたのだ。突然に!

ええ?二匹も買うの?予防注射もフィラリヤの飲み薬も二倍の出費だよ!
と思ったが、来たものは仕方ない。
夫は、子どもの時から犬を二匹飼うのが夢だったと上機嫌だ。

ノアクロウは出産経験はなかったが、おじゃるをかわいがった。
お乳も出るようになって、良い養母、乳母として、おじゃるに「犬の心得」「犬の生きる道」を教え込んだようだった。


おじゃるは大きくなるにつれて、耳がピンとたって、かしこそうな顔つきになっていった。

柴犬の血も交じっているようで、日本犬の雑種だった。飼い主に従順な、無駄吠えをしない、聞き分けの良い子に育っていった。

おじゃるが来て10か月後に、ノアクロウが死んだ。11歳だった。

おじゃるも私たちも悲しんだが、お互いに慰め合った。
犬が二匹いたおかげでペットロス症候群にならないですんだと思う。

そのおじゃるも14歳になった。
ノアクロウよりも長生きしている。
体もノアクロウよりも大きくて、病気知らず、毛並みもつややかで、実年齢よりも10歳は若く見えた。
散歩の時にも、よく吠える犬とすれ違っても、知らん顔ですたすたと通り過ぎる。
狂ったように吠える犬を連れた人からは、賞賛の眼差しが(笑)


ところが、昨年の冬、鳴かない子が泣くようになった。
娘が室内に入れて、よしよしと抱っこして寝るのだが、やはり尋常じゃないと、動物病院に連れて行ったら、どうやら心臓が弱っているようだとのことで、飲み薬をもらってきた。
暖かくなって、痛くなくなったのか鳴かなくなった。

今年は寒くなる前に室内で飼うようにした。
リビングルームのソファベッドで、娘と一緒に寝る毎日。

2月10日
おじゃるの様子が普通じゃないから、動物病院に連れて行くようにと娘からの指示。
おじゃるのにおいがいつもの健康な時のにおいと違う、と言うのだ。
動物好きの娘は、犬の言葉も犬の気持ちもよくわかる。

動物病院は歩いて10分ほどのいつもの散歩コースにある。
そこの獣医さんをおじゃるは大好きだ。
怖がりのノアクロウは連れて行くのに苦労したが、おじゃるは獣医さんに会うのがうれしくて、絶対に嫌がらない。

血液検査の結果「子宮蓄膿症」だった。
抗生物質を1週間ぶんもらって帰った。餌にまぜて飲ました。
食欲も落ちて、水ばかりどんどん飲む。
たべるものは何かと、工夫してあれこれやってみた。
牛肉、お刺身、今までめったに食べさせることのなかった高級食材ばかり。
ところが、それも食べなくなった。

それではと、猫の魚の缶詰はどうだ?食べた。
コンビニのおでんに入っている牛筋肉は食べた。
しかし、次には見向きもしない。
娘がコンビニのからあげくんを食べていたら、「ちょうだい」とすり寄ってくる。
食べた。
今までの好物だったチーズ、パン、ご飯、卵、魚には見向きもしない。
犬の体に良くないものは(ネギ類、チョコレートなど・・・)もちろん避けるのだが、もう食べてくれるなら何でもいい。
娘は離乳食のようなものを作って食べさせようとするのだが、少ししか食べない。
飲み薬も2週目に入ると、次第に嫌がるようになった。

2月20日(金曜)
食べないのと、薬を飲まないので病院に連れて行く。
歩くのを嫌がって、娘と私、交替で抱っこしながらやっと到着。
15キロある大型犬に近い中型犬だから、重くて大変だった。
薬を飲まなくなったことを話して注射に代わった。
子宮から膿が出るようになった。
よかった、これで治るといいね、と家族はよろこびあった。

2月23日(月曜) 
動物病院へ。
膿が出てきたので回復に向かっていると思い込んでいたが、悪化していた。
この病気は、抗生物質の飲み薬で治るケース。
次には注射で治るケースがある。
それで治らない場合には、子宮、卵巣を摘出手術してしまうことになる。
家族会議の結果、手術を決める。
ノアクロウとちがって、獣医さんが好きだし、根性が座っている子だから、精神的なストレスをさほど心配しなくてよい。

翌2月24日(火曜)
手術する。その日は入院。夕方電話をかけて手術の結果と様子をたずねる。
「とてもよいこにしていますよ」とのことで、安心する。

2月25日(水曜)
夕方、退院。エリザベスカラーを付けて帰ってくる。
「次第に食欲も出てきますから、そしたら大丈夫ですよ」と言われたのだが、全く食欲はない。
このままではいけない。

2月27日(金曜)
全く食べないので、点滴を希望する。血液検査の結果、腎臓の尿素窒素の数値が異常に高い。この病気は、最悪の場合、腎臓病を併発することがあり、それが死因となるという。
毎日、点滴をすることになる。

3月6日(金曜)
血液検査の結果、ALT(GPT・トランスアミナーゼ)の数値が1000。肝臓障害を起こしている。原因は食事をしないからだとのこと。

3月7日8日(土曜、日曜) 
吐く。
吐くときにもベッドで吐いたりはしない。
起き上がって外に出ようとするが、間に合わなくて、廊下の床や玄関のたたきにもどしてしまう。
おしっこの時にも、庭でしようとする。なんとかしこいのだ!

3月9日(月曜)
点滴に吐き気止めを加えてくれる。
獣医さんにばかりでなく、家庭でできる療法はないかと、娘がネットを調べる。
「こんにゃくの温湿布」「肝臓病のツボ」を指圧。犬がリラックスできるツボをマッサージ。
蒸しタオルで顔と頭、おしりを拭くこと。足湯。
こうした手当を一日に三回ほど続ける。

3月10日、11日、12日
娘が購入してきた犬用のミルクをスポイトで飲ませるようにした。
一回に30ccがやっと。一日に100cc。
ほめて、はげまして、どうにか飲んでくれるが、怒っているのだ。
吠えたり騒いだりするのではないが、目が怒っているのが分かる(笑)
飲んだ後はご褒美に蒸しタオルでお顔のマッサージをして機嫌をとる。


14年間、ほとんど病気をすることもなく、警備隊長として、セラピストとして、我が家に貢献してきたおじゃるさん。

できることをせいいっぱいするしかないね・・・

ひとりにしないようにしているのだが、止む終えず、ひとりで留守番をしてもらうわなくてはならないこともある。
そんなときには、うらめしげな眼付をするのだ。
「おかあさん、あたしを置いて行くの?さびしいよ」

娘がおしえてくれた。
「そんなときにはね、おじゃるさん、○○の御用ででかけますから、あなたは警備隊長の使命を果たしてくださいねと言って、『敬礼』をするといいんだよ」

今日は、祈祷会に出かける時に、娘に習ったようにやってみた。
すると「ラジャー。いってらっしゃい」という目で見送ってくれたのだ。

犬の気持ちがわかり、犬と話の出来る娘には助けられている。

マラナ・タ
犬のいる生活を与えてくださった神様ありがとうございます。