番外編 not normalな?精神科救急24時 | ヒーラー 沢井アキオのブログ

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ヒーラー 沢井アキオのブログです。某所で精神科医として働いていますが、本業の傍ら気功での施術とコーチングを行っています。

[お断り]この話は実話にヒントを得て創作したフィクションです。プライバシー保護のため、実際の症例の細部を改変して提示しています。
 

結構昔の話です。とある病院で精神科医として当直勤務をしていた晩のこと。その日は当直に入ってからコールが全くなく、「今日は平和だなぁ」と思いながら眠りにつきましたが、日付の替わる頃、ナースからのコールで起こされました。

「センセ、院外から受診希望の電話が入ってます。中学1年生の女の子で、2時間ぐらい過呼吸が止まらないので、親御さんが心配して診て欲しいって」

熟睡していたところを叩き起こされ夢うつつの状態でしたが、ちょっとだけ考え、「じゃあ受けましょう。来てもらってください」とナースに伝え、電話を切りました。

過呼吸発作は殆どのケースは時間経過とともに軽快します。わざわざ深夜に病院まで来なくても良いのでは?との考えもよぎりましたが、まだ小さなお子さんですし、親御さんが心配していることを考慮して受診を受けることにしました。

また、頻度は低いですが、くも膜下出血などの危険な病気を発症した結果、そのストレスから過呼吸が出現するケースもあることが知られています(幸い私はそのようなケースに出くわしたことはありませんが)。大したことないだろうと決めてかかって「自宅で様子をみて下さい」と伝えたり、適当な対応をしたりすると痛い目に合う可能性もないではありません。

正直に言って、夜間に一見軽症と思える方の受診希望のコールがあると、「そんなことでわざわざ夜中に来なくてもいいんじゃないの?」と、我々医療者はつい考えてしまいがちです。しかし、そんな思いに囚われると、見逃すと怖い病気の手掛かりはたちまちスコトーマに隠れ、見えなくなってしまいます。

患者さんが来るまでには少し時間があるようでしたが、叩き起こされてすっかり眠気も覚めてしまい、患者さんが来るまでひと眠りできそうでもなかったので、「患者さんが来たらどうしようかな」と少し考え始めました。現在はペーパーバッグ法は禁忌とされているので(ソースはこちらなど)、医療機関では行いません。「うーん、、、中学1年生かぁ。薬使うのもなんだし、表向き呼吸法でも指導しながら、裏で気功でリラックスに誘導したら落ち着くかなぁ、、、」なんてぼんやりと考えていたところ、ふと「あ、別に来るまで待たなくても今からリラックスしてもらえば良いのでは?」と思いついてしまいました。

まだ会ったこともない患者さんですが、患者さんの情報にアクセスすることを意図し、ごく軽ーく、少しだけリラックスに誘導してみることにしました。
 

1時間ほど後、再びナースからコール。

「センセ、さっき連絡があった過呼吸の患者さん、到着されました」


いそいそと診察室に向かうと、両親に伴われ、女の子が入ってきました。立って歩くのも辛そうな様子で「眠い~、眠い~」と訴えます。そして、過呼吸は止まっていました!簡単に問診と身体診察を行って異常がないことを確認し、「何かあったら連絡して下さい」とご両親に伝え、ご帰宅頂きました。

もちろん、気功での働きかけの結果過呼吸が止まったのか、時間経過で止まったのかは、この経過だけでは判断できません。また、病院に来るだけで落ち着く人も多いですし、「受診できる」と決まった途端落ち着く人も少なからずいらっしゃいます。