★あらすじ★

「キモい。」と罵られようがなんだろうが、交際を続行させようとする・・・さるる。
恋は引き際を間違えると、なにもかもが台無しになってしまう可能性をはらんでいる。



見つめただけ、尽くしただけ・・・ノゾミさんを傷つけていたのでした。






今回の記事BGMは白鳥英美子の『 Melodies Of Life 』です。
癒されるぜッ。









・・・では、本編スタートォ。








腕時計の一件からしばらくして・・・。






「キモい。」と罵られながらもさるるはノゾミさんと会っていました。
賞味期限切れの恋、すでに弾力性のある会話など期待は出来ませんでした。




ノゾミさんは大黒なんたらや、ドリームカムなんたらとかいう音楽の話をしますが・・・。
さるるは流行歌に興味もなく、ただ話を合わせるのに必死でした。






ノゾミさん
「この前、●●高校との試合負けてさー・・・。」






ノゾミさんはテニス部でした。
さるるは球技が苦手。






ノゾミさん
「ま、試合は負けたけど・・・学力的には●●高校には負けてないから。(笑)」






さるるは驚いてしまいました。
こんなことを冗談でもノゾミさんが言うなんて、信じられない。






さるる
「・・・それは、関係ないじゃん・・・・。(汗)」




ノゾミさん
「最近スラムダンクにはまっててさ~。」






ノゾミさんは勉強もできたし、可愛かったと思う。
当時の【いまどきの女子高生】にノゾミさんはどんどんと変わっていた。
化粧して、オシャレして、いろんな店やトレンドを知っている。
こんな彼女がいるなんて、さるるにとって自慢でした。







ノゾミさん
「あのさ、今日は駅前に行かんと喫茶店行かない?」






さるるとノゾミさんは『赤いママチャリ』を走らせて近所の喫茶店に入りました。
なんだか・・・ノゾミさんがソワソワしてるような感じがしました。






ノゾミさん
「今日、ちょっと用事あってね。早く帰らないといけないから・・・。」






さるるはピラフを頼んで、ノゾミさんは飲み物を注文しました。
ノゾミさんが早く帰ってしまうのは嫌だけど・・・。
一緒に時間を少しでも過ごせるだけでも感謝しなければ、と思っていました。





さるるのピラフが運ばれてきました。





ノゾミさん
「あのさ・・・・。」




さるる
「なんで飲み物だけなん?・・・お腹空くよ?」





ノゾミさん
「もう、別れようよ。お互いのためにさ。」







なんの脈絡もなかった。
・・・たぶん。






さるる
「・・・・お互いの、ため・・・・?」






ノゾミさんは別れたい、それはずいぶん前から知ってた。
でも・・・お互いのため・・・さるるのためでもあるってこと・・・?






ノゾミさん
「そうなんよ、お互いのためやで。」






ノゾミさんは明るい表情、というか割り切った表情だったのが印象的でした。
男女の別れって、もっと情緒があると思っていたんですが。





さるる
「・・・・・・・。」






さるるは【お互いのため】の意味をずっと考えた。
何度考えても、さるるにはわかりません。






ノゾミさん
「・・・じゃ、そういことだから。私もツライんよ?・・・わかってよ?」






ノゾミさんはそう言い残すと、お金をレシートの上に置いて店を出て行ってしまった。
いきなりの展開に、さるるの思考は追いついていけず・・・。
【お互いのため】の意味をまだ考えていました。






さるる
「え、えーと、俺がいなくなると、ノゾミのためになるってこと?・・・え?そうなん?」






安っぽいドラマだな、これは。
ドラマならこーいう時はどうするんだろう?
しばらく・・・さるるはどうするべきかを考えていました。






さるる
「でも、俺は別れたくない・・・追いかけてもう一度付き合ってもらうんだ!」






さるるはレジで支払いを済ませると『赤いママチャリ』でノゾミさんを追いかけます。
ママチャリが錆びた音を鳴らす。





さるる
「まだ、やり直せるって。ずっと一緒におろうってもう1回言うんや!!」






ノゾミさんにはすぐに追いつきました。
奇しくもノゾミさんに告白した時もこうやって自転車でノゾミさんを追いかけてたっけ。
そんなことを考えながら・・・。







さるる
「・・・・あ。」






遠くに・・・。
赤いスポーツカーみたいな車が停まっていました。
さるるはブレーキの音がしないように『赤いママチャリ』を止める。






さるる
「・・・・・・。」






運転手とノゾミさんがなにやら話をしていました。一体、誰なんだ!?
ノゾミさんは笑顔で助手席に乗り込んでしまった。







さるる
「・・・・・・。」






やがて車は重低音をうならせてどこかへ行ってしまいました。
ここまで見せつけられたら認めざる得ません。
もう、ダメだと思いました。








さるる
「・・・・もう、とっくに終わってたんやなー・・・・。」







何も考えられない。


いや、敗北感だけは確かにあったと思う。







さるる
「お互いのためって、こういうことかよ。」






車の排気ガスが匂ってきた。
気管が弱いさるるは咳き込んでしまった。







空を見上げると残酷なぐらい青い空。







さるるはママチャリを手で押して帰りました。
涙がこぼれるわけでもなく、ただ・・・疲れてしまった。






さるるは純愛を貫いているつもりだった。





でも、【ノゾミさんと新しい彼氏】からすれば・・・。
さるるは往生際の悪い【粘着ストーカー野郎】でしかなかったのです。
オモチャ屋の前でダダをこねている子供でしかなかったのです。






そう思うと・・・・。






ノゾミさんに対して本当に申し訳ないことをしてしまった、と。








やっと気づくのです。















(第3部・おわり)