「あたしのプリン食べたでしょ?」
彼女がにらむ。
「ふぶてぬい。」
僕は口を開けずに「食べてない。」と言ってみた。
しかし、その試みは失敗に終わった。
「どうして口を開けないの?」
「ふぶてぬいなる。」
僕は再び口を開けずに「食べてないから。」と言ってみた。
うまくいかない。
「口を開けて見せて。」
彼女が僕に近寄る。
彼女が僕の唇をつかむ。
彼女が僕の唇を上下にひっぱる。
・・・
ドーン。
口の中からぐちゃぐちゃになったプリン(元プリン)が現れる。
「ほら、食べてるじゃない。」
「ふいまへん。」
すいません、と言ったつもりだが、プリンが邪魔でしゃべれない。
「どうしてくれるの?」
たかがプリンで彼女はひどくご立腹だ。
今年で30。プリンごときでそんなに怒らないでくださいよ。
僕はしゃべれないので、マジックと紙を持ってきた。
さらさらと言いたいことを書く。
(今から口移しでこのプリンを君にあげるよ。心配ない。形はくずれてるけど、れっきとしたプリンだよ。)
ふーん。彼女はうなずく。
「分かったわ。じゃああたしが口を開けるから、あなたは口移しであたしの口にそのプリンを入れてちょうだい。」
(りょうかい)
あーん。
彼女が口を開ける。
僕も口を開ける。
さあ、プリンを口移し・・・
パーーーン!!
彼女のビンタが僕の頬を打った。
プリンが口から飛び散る。
床がプリンでべとべとになる。
「新しいプリン買ってきてね。」
「・・・はい。」
「あと、床も掃除しといてね。」
彼女は自分の部屋に戻っていった。